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米国ロサンゼルスに移り住んで45年、デビッド・チャン氏(男性・77歳)は、チリソース「シラチャーソース(スリラチャソース=Sriracha Sauce)」を有名ブランドにし、米国で唯一の「チリソースの億万長者」になった。
チャン氏は1979年に34歳でベトナムから米国に渡り、1980年の初めにカリフォルニア州ロサンゼルスに定住した。チャン氏はここで、タイ由来のレシピによるシラチャーソースの生産を手掛けるフイフォンフーズ(Huy Fong Foods)を設立した。
それから40年以上が経ち、シラチャーソースは米国のテレビドラマシリーズ「サバイバー」や国際宇宙ステーション、そして世界中の食卓にも登場するようになった。米国の市場調査会社NPDによると、米国の家庭の約10%がシラチャーソースを使用しているという。
シラチャーソースは、15億USD(約2040億円)規模の米国のチリソース市場の中で、マキルヘニー(McIlhenny)の「タバスコ(Tabasco)」、マコーミック(McCormick)の「フランクスレッドホット(Frank’s RedHot)」に次いで市場シェア3位の商品に成長した。
米国の調査会社IBISWorldによれば、2020年の推定売上高1億3100万USD(約178億円)に基づくと、現在のフイフォンフーズの企業価値は10億USD(約1360億円)に上る。こうして、フイフォンフーズ全体を所有しているチャン氏は、米国で唯一の「チリソースの億万長者」となった。
2020年にマコーミックがチリソースブランド「チョルーラホットソース(Cholula Hot Sauce)」を8億USD(約1090億円)で買収するなど、近年、シラチャーソースの競合他社の一部では買収の動きもある。しかし、チャン氏はシラチャーソースのブランドを売却するつもりはなく、現在フイフォンフーズで働いている2人の子供に会社を引き渡すと表明している。
シラチャーソースは広告費をかけることなく、また1980年代初頭から価格を引き上げることもなく、巨大なブランドに成長した。フイフォンフーズは、工場の異臭をめぐる訴訟や、直近では2022年の不作による唐辛子の不足で一時的に生産を停止せざるを得なくなり、さらに消費者が買いだめを増やしたことで小売価格が高騰するなど、多くの危機を乗り越えてきた。
チャン氏は最近の米経済誌フォーブス(Forbes)のインタビュー記事でこう語っている。「チリソースの辛さを増すなど、これからもより質の高い製品を作っていきたいと思っています。でも、利益を増やすことは考えていません」。
チャン氏は、ベトナムがフランスの植民地支配下にあった1945年に南部メコンデルタ地方ソクチャン省で生まれた。父親は商人、母親は専業主婦で、チャン氏のほかに8人のきょうだいがいた。