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イー・シウ・ニーさん(26歳)は、メイクをして、少数民族のエデ族の伝統衣装を着て、結婚式に臨んだ。1回目の結婚式とは違い、再婚となる今回は「新郎」ではなくニーさん自身が「新婦」だ。
南中部高原地方ダクラク省クムガル郡エアフジン村ジョク地区に暮らすエデ族のニーさんと、南部メコンデルタ地方バクリエウ省出身でクメール族のザイン・トムさん(30歳)の結婚式には400人以上のゲストが出席した。2人がこの幸せな日を迎えるまでには、数えきれないほどたくさんの社会からの非難を乗り越えなければならなかった。
ニーさんは小学3年生のころから、自分は他の男の子たちとは違うということに気づいていた。ニーさんは女の子たちと人形で遊ぶのが好きだったし、男の子に対してしか恋愛感情を抱かなかった。
しかし、生まれ持った身体は男で、ニーさん自身も他の人と違う自分でいたくなかった。「エデ族のコミュニティには、男の子が好きな男の子なんていませんでしたから」とニーさん。ニーさんは自分の中にある女性性を抑えて、外見のままに生きることにした。
そして19歳のとき、同じエデ族の女性と結婚した。「夫としての役割を全うしようと必死でした。でも、1度たりとも、楽しいとも幸せだとも感じられませんでした。何をするにも強制されているような感じでした」とニーさんは語る。娘も生まれたが、ニーさんが24歳のときにこの結婚生活は破綻した。ニーさんが、自分自身に嘘をつき続けていては幸せになれないと気付いたのもこのころだった。
ニーさんは村を出て東南部地方ドンナイ省に移り住み、工場労働者として働いた。そして、自分が同性愛者であることもカミングアウトした。2022年、LGBTコミュニティのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に参加したニーさんは、後に夫となるトムさんと出会った。
話の中で、2人は同じ会社に勤め、さらに同じ下宿に住んでいることがわかった。ただし、シフトが同じでも部門が違ったため、実生活では1度も顔を合わせたことがなかった。
SNSでつながった3日後、ニーさんは仲良くなろうと自分からトムさんの部屋を訪ねた。「彼に会った瞬間、ずっと前から知り合いだったかのように感じました」とニーさん。トムさんが病気になれば、ニーさんは翌朝薬とお粥を買いに行き、トムさんの部屋に届けた。
ニーさんの積極的な様子とは裏腹に、ニーさんと同じくかつては女性と結婚していたトムさんは、ニーさんとの距離を保っていた。