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「住まわせてもらう分、車両もきれいにしておかなければなりません。以前はカセットコンロを使っていたのですが、ガスボンベは1本1万VND(約50円)で、たくさん調理するので2日で5本も消費しました。そこで、大きなガスコンロを購入してコストを削減することにしたんです。でも、ガスは高いので、冷え込む夜でも水浴び用にお湯を沸かすことはありません」と語る。
先のクオンさんと同様、ホアンさんも生活用の水は雨水を集めて使い、飲料水はバスターミナルでバケツ1杯2000VND(約10円)で購入している。
ホアンさんは蚊が寄ってこないようにごみを片付け、清潔に保ち、バスを「生活に適応するための下宿先」のように思っている。座って温かいお茶を注いだホアンさんは、これまでの人生でも多くの困難を経験してきたが、こんなにも悲劇的な状況に直面したのは初めてだと長いため息をついた。
食べるものが足りず、他のバスで生活している人の中には自分で野菜を育てる人もいる。8番バスの運転手で、バスターミナル内の宿舎に住んでいるハイさん(男性)は、野菜を採ってからバスターミナルの奥に停車している10番バスに乗り込んだ。
ハイさんによると、この10番バスに住んでいるのは知人の車掌だという。10番バスは他のバスに比べて狭く、車内も暑いため、住人は普段は宿舎で過ごし、食事や就寝のときだけバスに戻っている。
一時的な生活ではあるものの、路線バスの運転手や車掌は皆、何とか生き延びているという状況だ。境遇は人それぞれだが、共通の願いは新型コロナが収束し、路線バスの運行が再開され、仕事に行き、自分と家族の生活を支える収入を得られるようになることだ。
ベトナム国家大学ホーチミン市校のバスターミナルを管理しているグエン・ビン・トゥン氏によると、現在バスターミナルには約80台のバスが停車しており、約50人の運転手や車掌が生活している。ほとんどはバスターミナル内の宿舎に住んでいるが、一部は経済的な事情で部屋を引き払い、バスの車内で生活している。
トゥン氏によると、協同組合は運転手や車掌に1人につき100万VND(約5000円)を支給しているが、国の支援による給付金については対象が定められているため、受け取れる人と受け取れない人がいるのが現状だという。