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午後3時、ハノイ市ハイバーチュン区ファムディンホー街区在住のグエン・ゴック・クアンさん(男性・61歳)が、手に持った棒で地面を叩くと、生後4か月の真っ白なアヒルは「散歩の時間だ」と理解し、クアンさんの後ろをいそいそと追いかける。「早くおいで、迷子になるよ」と、クアンさんは振り向いてアヒルに話しかける。
毎日午後になると現れる、アヒルを引き連れて歩く白ひげをたくわえた男性の姿は、ファムディンホー街区の住民たちの間では長年のおなじみだ。
「普通は犬や猫をペットとして飼うでしょうが、私はアヒルを飼うのが好きなんです」とクアンさんは語る。
クアンさんがアヒルをペットとして飼うようになったのは、今から10年余り前に、妻が路上でホビロン(孵り途中のアヒルのゆで卵)の店を開いたのが始まりだ。
ときどき成長しすぎて販売できない卵があると、クアンさんはその卵を持ち帰り、自ら孵化させて育てた。まだ経験が浅かった最初のころは、孵化したアヒルが病気になり、死んでしまうこともよくあった。孵化してから数か月間は育てることができても、ネズミに噛まれたり、道路に飛び出してバイクにひかれたりした子たちもいた。
妻はもう店を閉めてしまったが、クアンさんは今でもアヒルの卵を買ってきては孵化させ、ペットとして飼うという習慣を続けている。クアンさんは自分のアヒルを売ったり食べたりするつもりは毛頭ない。