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「姉は外を見ていて、私が外から入るとお互いに見つめ合い、まるで鏡を見ているかのようでした。私たちは大泣きしました。道の両脇にはたくさんの見物人がいましたが、誰が見ても2人はそっくりで、一目で姉妹だとわかりました」と妹のレさん。
「30年近くの間、自分は孤児で、誰も身寄りがいないと思って生きてきましたが、突然実の妹が現れて。話し方や歩き方、髪質まで同じで、言い表せないくらいの幸せを感じました」と、姉のランさんは当時の感情を思い出して語る。
姉妹はティエンザン省とドンナイ省で離れて暮らしながらも常に連絡を取り合い、毎日話をした。それはお互いに欠かすことのできない時間だった。それでも、捨てられて傷ついた過去からは抜け出せず、2人は母親を探す勇気も意欲も持てずにいた。
31歳になるランさんの娘のクエ・タインさんは母親に実母を探したいかと何度も尋ねたが、ランさんは、愛してくれる養父母と暮らしているのにどうして自分を捨てた人を探さなければならないのか、と無関心だったという。
姉妹の再会から数年後、レさんの養母は他界し、2013年にはランさんの養父母も順にこの世を去った。その頃、姉妹の心に空いた穴はどんどん大きくなっていった。そして、歳を取るにつれて、姉妹は恨みの感情を手放し、実の両親を探したいと思うようになった。
今年6月初め、娘のタインさんが南中部沿岸地方ダナン市に出張に行き、ランさんに電話をかけてきた。その時、ランさんは「タイン、ダナン市にいるならニャチャン市に寄って、実のおばあちゃんを探してきて!」と口走り、母子で涙を流した。
「それは、母が何十年も口に出すのを抑えてきた言葉だということは知っていましたが、ようやく言う勇気が出たんだと思います」とタインさん。彼女は母親と叔母が書いたメッセージをSNSに投稿し、人探しに関する様々なチャネルとつながって実の祖母を見つけたいと願っている。
「お母さん、今、私たち姉妹はそれぞれ家庭を持って幸せに暮らしています。私たちは52歳になり、孫もいます。お母さん、今までずっとこういったメッセージを伝えることができなくて、ごめんなさい」と、2人は母親に宛てて記した。
レさんは仕事の都合で東南部地方ビンズオン省に引っ越したが、数年後にはティエンザン省カイベー郡に移り、家を建てて姉のそばで暮らす予定だ。「身内は姉妹2人しかいません。他に誰もいないので、困ったときは一緒にいないと」とレさん。
レさんは今でも夜な夜な遠方から姉に電話をかけ、SNSで人探しの情報を見ようと誘っている。「もしかしたらいつか、お母さんが私たちのことを探しているという情報を見つけることになるかもしれませんから」と、2人は希望を込めて語った。