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養母の話によると、実の母親は1954年か1955年生まれで、南部メコンデルタ地方ビンロン省出身のファン、もしくはファム・ティ・ダオさんというそうだ。子供を手離す理由を尋ねたところ、韓国軍人の男性との恋愛の末に授かった命だが、男性は母国に帰って音信不通になってしまい、1人では双子を育てることができないからだと答えた。
「養母は、もしこの世で自分にそっくりな人に出会ったら、その人が実のお姉さんよ、と言っていました」とレさんは振り返る。レさんはずっと実の姉を探したいと思っていたものの、経済的に苦しい生活の中でその夢も埋もれていった。
ある時、ティエンザン省カイベー郡の劇団がドンナイ省カムミー郡ソンザイ村に公演に訪れ、ソンザイ村に暮らすレさんもその公演を見に行った。すると劇団員の1人から突然肩を叩かれ、「あれ、ランさん、どうしてここにいるんですか?」と尋ねられた。レさんは「私の名前はレで、ランじゃありませんよ」と返事した。
しかし、ふと養母の話を思い出したレさんは、その劇団員に、ランさんという名前の女性が養子かどうかを尋ねたところ、その女性はカム夫妻の養子だということを知った。それでも、この世の中にはきっと同じような境遇の人がたくさんいるだろうと思い、また子供を出産したばかりで忙しかったレさんは、この話をあまり気に留めなかった。
一方、2000年のある日、ティエンザン省カイベー郡でコーヒーを委託販売していた男性が、営業のためにランさんの家のドアをノックした。ランさんを見ると、男性は驚いて「どうしてレさんがここにいるんですか?」と尋ねた。ランさんは詐欺か何かだと思い、「私の名前はランで、レじゃありませんよ」とだけ答えた。すると男性は、自分の家の近所にランさんとそっくりの女性が住んでいるのだと話し、今度写真を持ってくると約束した。
その男性は、レさん一家の近所に住んでおり、ドンナイ省に帰るとレさんの養母にその話を聞かせた。すでに高齢だった養母は、レさんのために血のつながった身内を探してあげたいと思い、こっそりとランさんの家を訪ねた。
家にはランさんの夫しかいなかったものの、壁に掛けられていた結婚写真を見て、レさんの養母はレさんの双子の姉を見つけることができたと確信した。養母はランさんの夫に事情を話し、いつか2人を再会させてあげましょうと約束した。しかし、再会の時はすぐにやってきた。その翌日、養母とレさん夫妻は早速ランさんに会いに行ったのだった。