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南中部沿岸地方カインホア省ニャチャン市在住のファム・ティ・アイン・トゥーさんは、依頼人1人1人から聞く話をもとに、彼らが当局に提出する書類の文章をタイプライターで打っていく。
ファンボイチャウ(Phan Boi Chau)通りとハントゥエン(Han Thuyen)通りの角に座り、この30年余りの間、トゥーさんはせわしなくタイプライターを打ち、人々のために数十万通もの書類を作成してきた。
トゥーさんの仕事場には高さ1mもない小さな台があるだけで、看板すら掲げていないが、誰もがトゥーさんのことを知っており、書類が必要になるとトゥーさんのもとにやってくる。
トゥーさんはこの日、書類の作成を依頼しにきたレ・ティ・ビンさんの話にじっくりと耳を傾け、内容を暗記してからせっせとタイピングしていく。書類が完成すると、トゥーさんは自分の訴えが正しく適切であることを証明するために提出しなければならない関連書類についても丁寧にアドバイスした。
小学5年生を終える前に学業から離れたビンさんにとって、書類の作成はとても難しいことだった。家が貧しく、弁護士に依頼することもはばかられたというビンさんは当初、印刷屋に書類の作成を頼んだものの、書類の内容を話すと首を横に振られてしまった。「それでトゥーさんのもとに駆け込んだら、トゥーさんは私の話を聞いただけで私が何を望んでいるのか、何を必要としているのかもすぐにわかってくれました」とビンさん。
トゥーさんは30年間で一体何通の書類を作成したか、もはや覚えていないが、今から10年近く前に離婚申立書の作成を依頼しに訪れたという女性の思い出を嬉しそうに語った。
50歳そこらのその女性は、自転車でトゥーさんの仕事場のところへやってきたが、何を言い出すでもなく1時間近くもトゥーさんのそばにたたずんでいた。おかしいと思ったトゥーさんが声をかけると、その女性はおずおずと口を開き、夫への離婚申立書を作成してほしいのだと言った。
女性は落ち込んだ様子で自分の結婚生活について語り始めた。夫婦は結婚して30年近く経ち、子供も3人いる。しかし、ここ数年は夫がしょっちゅうお酒を飲み、酔っぱらっては妻を殴り、子供たちにも怒鳴りつけるのだという。理由はただ、生活が苦しいから。夫が1人で家計を支え、身体の弱い妻は専業主婦だった。