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今から7年前、ブー・ティ・トゥエットさんは初めて男性からのメッセージを受信した。しかし、それは口説き文句ではなく、返金の申し出だった。
東南部地方ビンフオック省在住のトゥエットさんは、今でもそのときのことをよく覚えている。トゥエットさんはその日、携帯電話に1万VND(約59円)をチャージしてほしいと妹から頼まれた。「妹の番号に送金したつもりが、番号を1つ打ち間違えたようで、別の人の携帯電話に送金されてしまったんです」とトゥエットさんは語る。その相手こそが、後に夫となるハイさんだった。
東北部地方ランソンに住んでいたゴ・バン・ハイさんは、送金があったことに気づいたものの、誰からかはわからなかった。そしてその日のうちに、ハイさんは南部と北部のアクセントが混ざった女性からの電話を受けた。「彼女は返金を求めるわけでもなく、ただ間違えて送金したことを確認したかっただけのようでした」とハイさんは振り返る。
ハイさんは返金の申し出を口実にしてトゥエットさんにメッセージを送ったが、本当の目的は知り合いになることだった。この誤送金は運命に違いないと信じていたのだ。一方、トゥエットさんはというと、そこまで深く考えていなかった。楽しみを見つけようとハイさんとのメッセージのやりとりに同意したが、障がいを持つ自分に男性が好意を寄せてくれるとは期待もしていなかったという。
トゥエットさんの脚は生まれつき曲がっていて、病院で骨形成不全症だと診断された。少しの衝撃ですぐに骨折してしまうため、トゥエットさんは小学2年生が終わる前に退学して家で過ごすようになり、4人の妹の世話や料理をしたり、両親が営む食堂を手伝ったりしていた。
トゥエットさんの妹たちは皆、年頃になると男性にモテたが、トゥエットさんだけは毎日家の中で寂しく過ごしていた。しかし、ハイさんと知り合ってからは、携帯電話のメッセージの着信音が鳴ると心臓の鼓動が速まるようになった。苦労が多く、外の人との関わりもほとんどないトゥエットさんにとって、ハイさんからの電話やメッセージは日々の生きがいとなった。
2人は1年以上、電話とメッセージだけのやりとりを続けた。そして2016年のテト(旧正月)が近づいたころ、ハイさんは1000kmも離れたトゥエットさんの家に遊びに行きたいと話を持ちかけた。
トゥエットさんは驚くと同時に、ハイさんが障がいを持つ自分の姿を見たらもう友達でいてくれなくなるのではないかと恐くなり、何も言葉を返すことができなかった。しかし、事実を隠しておくこともできず、トゥエットさんは自分の病気についてハイさんに全て話し、ハイさんが静かに自分から離れていくことを受け入れるために心の準備をした。