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愛情に飢え、辛い子供時代を経験したホーチミン市在住のフイン・クアン・カイさん(男性・32歳)は、宝くじ売りや資源回収(ベーチャイ=ve chai)の仕事をしながら生活していかなければならない、文字を知らない子供たちの運命を誰よりもよく理解している。
カイさんは経済的に困難な家庭で生まれ育った。幼い頃から母親と2人きりの生活で、生計を立てるために苦労する日々を送っていた。中学校時代には、他の生徒の保護者が子供を迎えに来て校門の前で我が子を可愛がる光景を見て、涙を流したという。
「その光景を見て、自分を哀れんでただただ遠くに逃げたくなりました」とカイさん。そして、2009年に自分の教室を開くまでの過程をこう振り返った。「生活のために苦労して宝くじを売っている無垢な子供たちの姿に自分の子供時代が重なり、彼らを助けるために何かしようと決心しました。それで、友人たち数人と一緒に、宝くじ売りや資源回収をしながら生活する子供たちに文字を教える教室を始めたんです」。
小さな村に明かりが灯るように、ホーチミン市12区の小さな路地裏でカイさんたちの教室が始まった。当初、教室には数人しか生徒がいなかったが、子供たちが同じような境遇の友人を誘うようになり、次第に教室に人が増えていった。
カイさんは教育学の専門ではなかったが、子供たちが興味を持ってすぐに吸収できるよう、わかりやすく親しみやすい教え方を模索し、努力を続けた。講師陣は6年間にわたり子供たちに寄り添ったが、カイさんの友人たちは本業の仕事が忙しくなり、教室に参加できなくなった。最後に残ったカイさんは1人で教え続けたが、2015年に観光ガイドとして働く道を選び、教室を閉じた。
しかし、2015年9月、宝くじを売る子供の1人がカイさんにこう伝えた。「先生、また教えてよ」。この言葉がカイさんの心に響き、カイさんは自宅で教室を再開することにした。