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経済的に困難な状況にある子供たちに文字を教えるために教壇に立っているこの10年余りの間、カイさんが辛いと感じたことは一度もなく、疲れを感じたとしても自分の生徒たちを見るだけで元気が出るという。子どもたちのために有意義な仕事をすることが、カイさん自身の人生において最大の喜びになっている。
スポンサーからの支援について、カイさんは自分のことをよく知っている人、一緒にツアーに行ったことがある人など、直接の知人からの支援しか受けていない。そうすることで、カイさんの取り組みへの誤解が生じないようにしているのだという。
「たくさんの人が子供たちに金銭的な支援をしたいと電話をくれますが、お金は受け取りません。代わりに、雑貨店や文房具店のリンクを送って、そこから注文してもらうんです。注文が入ったら、お店から子供たちの家まで商品を配達してもらっています。皆さんのご支援には心から感謝していますが、見知らぬ人から金銭を受け取ることはしたくないんです」とカイさんは教えてくれた。
現在、カイさんは観光ガイドのほかにバインミー(ベトナム風サンドイッチ)の屋台を開いている。目的の1つは、売り上げを教室の運営に充てること。そしてもう1つの目的は、子供たちに商売を体験させ、将来生計を立てるための学びとすることだ。「この先、お金も名声もすべてを失うことがあるかもしれない。でも、決して失ってはいけないものが2つあるんだ。それは、尊厳と、親切な心だよ」。カイさんはいつも生徒たちにこう教えている。
多くの子どもたちはカイさんの教室を出てから、生活に困らない安定した仕事に就いているという。電話修理店のオーナーや自動車修理工場のオーナーになった生徒もいて、そういった報告を聞くたびにカイさんはとても嬉しい気持ちになる。
それでもカイさんは、自分の教室の生徒を増やすことも、この取り組みをずっと続けていくことも決して望んでいない。なぜなら、カイさんは心の中で、子供たちの苦労が減るように、そして文字を知らないという悲惨な運命がなくなるようにといつも願っているからだ。