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家族を養うために忙しくしている妻を目にしながら、ビンさんはある日、取り乱して部屋の隅にある殺虫剤の瓶を見つけ、「人生を終わらせよう」と考えた。しかしそのとき、不意に4歳になる娘がビンさんのところに走り寄って来て、父親の脚をさすりながら聞いた。
「お父さんはいつ歩けるようになるの?元気になったら私を学校に連れて行ってね」。その言葉にビンさんは目を覚まし、娘の頭を撫でながら赤い目をそっと伏せた。
脚の麻痺に加え、脊髄炎の影響によりビンさんは「男性の本能」すらも失ってしまった。妻の隣に横になりながら、ビンさんは「君はまだ若いのに、このような状況でいるのはあまりに気の毒だ」と、躊躇しながらも何度も別れを伝えた。
ホアさんは夫から離婚の話を聞くたび、首を横に振った。「夫婦は運命を共にしているの。縁があったのだから、何があっても一緒にいなければならないのよ」とホアさんは断言した。
妻を説得することができず、ビンさんは妻が自分を嫌になる理由を探し、行動を仕掛けた。ビンさんがホアさんを強く叱ると、彼女はただ静かに夫の怒りが治まるのを待ってから、「何があっても私は決してあなたと別れないわ」と夫に伝えた。
そしてホアさんは静かに外に出て、夫が1人で怒りを鎮めるための時間を与えた。妻の揺るがない決心を前に、ビンさんは離婚の話をすることを止め、妻に冷たい態度で接したが、ホアさんは落ち着いて夫の世話を続けた。
家にいる間、ビンさんは脊髄を損傷した人々のグループをオンライン上で見つけ、参加するようになった。多くの人が自分よりも苦労している現実を知り、「自分には面倒を見てくれる妻がいるのに、なぜいつも穏やかでいられないのだろうか」と自問自答を重ねた。
「死ぬことができないのなら、より良く生きようと頑張らなければいけない。家族や社会の重荷になってはいけない」。ビンさんはこのグループの友人の言葉を胸に、自力で壁に寄りかかり、ベッドの脇にある車椅子に移動し、ほうきを持って掃き掃除をするようになった。