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サイゴンには、年中空き瓶拾いやくず鉄拾いをしながら生計を立てている老人が大勢いる。真っ黒に日焼けした彼らは、実は助け合いの精神に溢れている。今日はそんな彼らが集まる、とある菜食食堂を紹介しようと思う。
年の瀬も迫った12月のある日、我々は11区グエンチータイン通りにある「ティエン・フオック」という菜食食堂に立ち寄った。ここは貧しい労働者たちに1食5000ドン(約24円)で料理を提供している。
向かいのカフェで取材に応じてくれたのは、店主のチャン・フオック・ホアさん(38歳)。彼は客が帰った後や客足の伸びない日にはここに座って、休んでいるのだという。彼はため息混じりに語った。「お婆さんが最近顔を見せてくれないのです」
そのお婆さんというのは、空き瓶売りをしている82歳の老婆のことで、よくこの店に食事をしに来ていたという。街中を歩き回って、空き瓶を集める老婆のことを不憫に思った彼は、ある日、「今日は代金は要らないよ」と申し出た。すると、老婆は彼の手に5000ドンをねじ込んで、「私はまだ元気だから、その日の生活費を稼ぐことができる。もっと貧しい人に恵んでおやり」と言った。