毎月最終日曜日には墓地に眠る胎児たちを慰めようと、各地から人々が教会へ足を運び厳かにミサが行われる。ミサには信者ではないながらもティックさんの活動に賛同し、共に活動するボランティアメンバーの姿もある。
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胎児たちを天国へ送る前に、ティックさんは最後の祈りを捧げる。「主よ、この祈りとロウソクの灯り、そしてこの懺悔をもって、子供たちを慈しみたまえ。ここに子供たちに安息の地を与えたまえ」。
「生ける命を守る」ことを使命に、ティックさんはお腹の赤ん坊を生み育てることに不安を抱く妊婦や、家族から逃れて来た母子もシェルターで保護支援している。
ここでティックさんが最も力を入れているのが、母親のお腹の中で育まれている小さな命を守ることだ。妊婦が置かれた状況によっては幼い命は容易に絶たれてしまう。妊婦がお腹に宿っている胎児の埋葬を依頼しに教会へ訪れるケースさえあるという。
このシェルターでは開設から8年の間に、母子800人の命を救ってきた。ティックさんがシェルターに入所した妊婦に対してまず初めにすることは、話を聞くこと。そして妊婦を励まし、お腹に宿った命を守ることの大切さを伝える。入所する妊産婦は健康状態や能力に応じて、菓子の包装や衣料品の縫製、子守り、雑用係など就業の機会も与えられ、母子の自立も促す。
2週間前に男の子を出産した入所者の女性はティックさんを命の恩人だと語る。「ティック神父様の施設をインターネットで見つけたんです。当時はあまりにも多くの問題が起きていて、神父様たちがいなければ私と息子の命は今頃どうなっていたか分かりません」。
今まででティックさんが最も苦労したのが、出産に猛反対の家族から逃れて施設にやってきた若い女の子だ。娘の妊娠に怒り心頭の家族はお腹の子供を中絶しない限り娘として家に戻らせないと女の子に詰め寄り、女の子は不安と恐怖に晒されていた。ティックさんはあらゆる手立てを講じてお腹に宿った命を守った。そして、いざ赤ん坊が生まれると家族のいがみ合いは消え、みんなが赤ん坊を可愛がったという。
「主よ、我らの罪を許したまえ。宿された命を生かしたまえ。生ける命を、その暮らしを守りたまえ」。今日もティック神父は祈りを捧げる。