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サイゴン動植物園のゾウ舎では、「常に2人で作業にあたること」という、すべての飼育員が守らなければならない安全規則がある。1人は突発的な事態が起きた時に自分の命を守る道具を持ち、1人は相手の飼育員をよく観察して、危険が迫ればすぐに知らせる役割を負う。
「飼育員が食事を与えようとかがんでいる時に、ゾウは攻撃するつもりがなくても前後に踏み出して飼育員にぶつかるということもあり得るので、注意しなければいけません。ゾウの体重は数tもあり、ぶつかろうものなら飼育員はいとも簡単に怪我をしてしまいます。そのため、常に作業中の相手の様子を観察する人が必要なんです」とチュックさんは説明する。
ゾウはとても賢い動物で、サイゴン動植物園のゾウたちもまた、好き嫌いをはっきりと表現する。飼育員たちはこれまでに何度も、ゾウをつがいにして繁殖させようとしたが、メスのゾウが相手のオスのゾウを気に入らず、成功には至らなかった。
チュックさんによると、2011年から2012年頃、園は市のサーカス団にいたゾウを受け入れた。そのゾウは凶暴で、人間と戦うこともいとわなかった。長い時間をかけて世話をしてようやく、飼育員がゾウ舎に入って食事を与えられるようになったのだという。
これは環境の変化と見知らぬ「隣人」のせいで、ゾウがなかなか適応できなかったのだ。ゾウは新しいゾウ使いのことが理解できず、意思疎通もできず、常に守りの姿勢に入ってしまっていた。さらに、食生活や観光客との交流もこれまでの環境と違い、ゾウはプライベートな空間を失ったように感じざるを得なかった。
ゾウの習性では、群れのリーダーになるのは年老いたメスだ。メスが受け入れれば、オスは一緒に暮らすことができるが、反対にメスが相手のオスを気に入らなければ、オスと戦う。実際のところは、年老いたメスのゾウが群れの活動を管理し、他のゾウたちはこれに服従するため、時には教えを示そうとメスを攻撃することもあるという。