VIETJO - ベトナムニュース 印刷する | ウィンドウを閉じる
[特集]

サイゴン動物園のゾウたちの知られざる物語

2023/09/10 10:24 JST更新

(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien
(C) thanhnien
 ホーチミン市1区のサイゴン動植物園で暮らすゾウたちは、エリア内を自由に歩き回ることができるだけでなく、定期的に筋肉の動きを測定されたり、歯科検診を受けたりもしている。最も高齢のゾウは今年65歳で、最も体重が重いゾウは4.5tにも達する。

 サイゴン動植物園のゾウたちは、「都会の緑の肺」を訪れる市民や観光客の注目を集める存在となっている。ずんぐりした4本脚に長い鼻としっぽ、そして常にパタパタと動く耳を持つその大きな姿は、一見鈍そうにも見えるが、勇猛さと強さを醸し出している。

 サイゴン動植物園の動物事業所所長であるマイ・カック・チュン・チュックさんによると、この動物園のゾウやその他の動物たちには全てそれぞれ独自の飼育手順があるという。ゾウの飼育員は一定期間、園内のゾウ一頭一頭の習性や、食事の内容と量、時間を把握するためのトレーニングを受けなければならない。飼育員のほかに、健康を管理する獣医や、問題が発生した際に対応する検査チームもついている。

 「現在、サイゴン動植物園には、チュオン、ボー、トム、ニーという名前の4頭のゾウがいます。その中で、チュオンは今年65歳と最高齢です。一番若いゾウは32歳、一番重いゾウは4.5tにも達します。毎日、1頭につき主菜の草を100~120kg食べるのですが、他に副菜として新芽のついた若木、ニンジン、カボチャ、サトウキビ、パン、サツマイモ、オレンジなど様々な食べ物を5~10kgほど、飽きないように与えています。草と若木はホーチミン市内のクチ郡にある会社から、その他の食べ物はサプライヤーから仕入れています」とチュックさんは語る。

 チュックさんによると、大人のゾウの体重はあまり変化しないが、時々太ったり痩せたりすることがあると、飼育員は見た目や肌の張りなどをチェックして健康状態の判断材料にしている。また、飼育員がゾウを立たせたり座らせたりするのは、サーカスをさせるためではなく、筋肉の可動性や脚の動脈、歯をチェックするためだという。

 「2016年以降、サイゴン動植物園では動物によるサーカスのパフォーマンスを完全に止め、動物たちに鞭を使うこともありません。ゾウたちは昼も夜も自分たちのエリア内を自由に歩き回ることができます。ゾウたちを檻に入れるのは、エリア内の掃除をする時だけです」とチュックさん。

 サイゴン動植物園のゾウ舎では、「常に2人で作業にあたること」という、すべての飼育員が守らなければならない安全規則がある。1人は突発的な事態が起きた時に自分の命を守る道具を持ち、1人は相手の飼育員をよく観察して、危険が迫ればすぐに知らせる役割を負う。

 「飼育員が食事を与えようとかがんでいる時に、ゾウは攻撃するつもりがなくても前後に踏み出して飼育員にぶつかるということもあり得るので、注意しなければいけません。ゾウの体重は数tもあり、ぶつかろうものなら飼育員はいとも簡単に怪我をしてしまいます。そのため、常に作業中の相手の様子を観察する人が必要なんです」とチュックさんは説明する。

 ゾウはとても賢い動物で、サイゴン動植物園のゾウたちもまた、好き嫌いをはっきりと表現する。飼育員たちはこれまでに何度も、ゾウをつがいにして繁殖させようとしたが、メスのゾウが相手のオスのゾウを気に入らず、成功には至らなかった。

 チュックさんによると、2011年から2012年頃、園は市のサーカス団にいたゾウを受け入れた。そのゾウは凶暴で、人間と戦うこともいとわなかった。長い時間をかけて世話をしてようやく、飼育員がゾウ舎に入って食事を与えられるようになったのだという。

 これは環境の変化と見知らぬ「隣人」のせいで、ゾウがなかなか適応できなかったのだ。ゾウは新しいゾウ使いのことが理解できず、意思疎通もできず、常に守りの姿勢に入ってしまっていた。さらに、食生活や観光客との交流もこれまでの環境と違い、ゾウはプライベートな空間を失ったように感じざるを得なかった。

 ゾウの習性では、群れのリーダーになるのは年老いたメスだ。メスが受け入れれば、オスは一緒に暮らすことができるが、反対にメスが相手のオスを気に入らなければ、オスと戦う。実際のところは、年老いたメスのゾウが群れの活動を管理し、他のゾウたちはこれに服従するため、時には教えを示そうとメスを攻撃することもあるという。

 「以前、繁殖の目的でオスとメスと一緒にしたことがあるのですが、メスが嫌がってオスを攻撃し、オスは溝に落ちてしまったんです。溝に落ちたゾウを引き上げるのに、クレーン車を呼ばなければなりませんでした。必ずしもメスがオスより強いというわけではありませんが、ゾウは母系制に従って生活しており、最年長のメスが群れを管理します。そのため、オスは自然にそれを受け入れ、反感を持つことはありません」とチュックさんは語る。

 こうした理由で、リスクを回避すべく、サイゴン動植物園では園でゾウを繁殖させるのではなく、ゾウの個体数を保全するという方針をとることにしたのだった。

 サイゴン動植物園のゾウの群れに関してもう1つ興味深いことは、チュオンという名前のゾウの年齢だ。データによると、アジアの野生のゾウの平均寿命は50歳から60歳だが、チュオンはすでに65歳になっている。アジアの動物園の中では、台湾で100歳を超えたゾウの記録がある。

 チュオンは高齢のため、目は見えにくいが、耳はまだはっきりと聞こえている。棒を叩く音、歩く音、話す声などを聞いて、チュオンは自分の世話をしてくれる飼育員を認識し、友好的な態度を示すのだという。

 サイゴン動植物園では、4頭のゾウが不利益を被ることのないよう、それぞれの個体に専属の担当飼育員をつけている。これにより、ゾウと飼育員との1対1の愛情とつながりを深めているのだ。

 「もし、飼育員が1人で複数の動物の世話をするとなると、飼育員が特定の気に入った個体をかわいがってしまい、他の個体が不利益を被る恐れがあります。逆に、複数の飼育員が1頭の動物の世話をすると、その動物のお気に入りの飼育員と、そうでない飼育員が出てくる可能性があり、そうなれば飼育員に危険が及ぶんです」とチュックさんは話した。 

[Thanh Nien 10:44 06/08/2023, A]
© Viet-jo.com 2002-2024 All Rights Reserved.


このサイトにおける情報やその他のデータは、あくまでも利用者の私的利用のみのために提供されているものであって、取引など商用目的のために提供されているものではありません。弊サイトは、こうした情報やデータの誤謬や遅延、或いは、こうした情報やデータに依拠してなされた如何なる行為についても、何らの責任も負うものではありません。

印刷する | ウィンドウを閉じる