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フオックさんが生まれる前、家族の中で唯一目が見えるフンさんは、家のことをすべて1人で背負っていた。フンさんはしょっちゅう、家族の誰か1人でも目が見える人がいてくれたら、そして自分の仕事を手伝ってくれたら、と願わずにはいられなかった。
フオックさんの父親であるグエン・ゴック・ランさんは、フオックさんが5歳のときに妻、つまりフオックさんの母親と離婚した。「うちはこんな状況ですから、家族も(離婚を)受け入れています。彼女を非難するようなこともありません。彼女の幸せのためです」とフンさんは語る。
フオックさんは、早くから家族の状況を理解し、強くなっていった。「惨めなんかじゃなく、むしろこの状況を原動力にしてきました」とフオックさん。
フオックさんは、幼いころから祖父を手伝って家事をし、家畜の世話をし、精米をした。高校生の3年間は実家を離れて食事や宿を提供してもらいながら勉強し、ときどき実家に帰ると祖父の作業場に駆け込んだ。
困難な状況にひるむことなく努力を続けたフオックさんは、小学校から高校まで12年間ずっと優秀な成績を収めた。そして、高得点で大学に合格することができた。フオックさんは、エンジニアになるという夢を抱いている。
フオックさんの大学合格の知らせに家族は皆喜んだ。フンさんは、フオックさんのことを「家族の最大の希望であり、支えでもある」と言う。