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リエンさんが2006年から書き続けている記録ノートには、救護した人の名前、年齢、出身地、健康状態などの情報が丁寧に記されている。救護した人の中には80歳以上の人もいれば、年端もいかない子供も少なくない。リエンさんが助けたけが人のほとんどが無事に回復し、後遺症もないという。
フックタイン村在住の母子、グエン・ティ・トゥイさんとドー・ティ・ゴック・アインさんは2014年9月、道路を渡っている途中に不運にも車と衝突した。誰かの叫び声が聞こえ、リエンさんと息子はすぐに駆けつけて応急処置を施し、周囲の人の手を借りて担架に乗せて郡の病院に運んだ。
2人は外傷性脳損傷と診断されたが、手術後は危険な状態を脱し、現在は2人とも健康状態も安定しているという。母親のトゥイさんは会社員として働き、子供のアインさんは中学校に通っている。「自分が救護した人が元気になったのを見ると、私もうれしいですね」とリエンさんは語る。
同じくフックタイン村在住のドー・ティ・ゼンさん(女性・84歳)もまた、リエンさんのことを恩人と呼ぶ1人だ。ゼンさんは道路を横断中にバイクと衝突して頭部に傷を負ったが、リエンさんがすぐに包帯を巻いてくれた。ゼンさんは額の傷を見るたびにリエンさんへの感謝の気持ちを思い出すという。「私だけでなく、地元のたくさんの人たちが彼女のお世話になっているんですよ」とゼンさん。
人を助けたい一心で続けている活動だが、トラブルになったり、助けた相手から責められたりすることも少なくない。2012年のテト(旧正月)のころ、リエンさんはバイク事故に遭った青年に応急処置を施した。しかし、意識を取り戻した青年は、バイクの収納スペースからお金を盗んだだろうとリエンさんを責め立てた。警察が介入し、目撃者の情報により犯人が逮捕されてようやくリエンさんは潔白を証明することができた。