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そんな時はいつもハイさんが「どんな子であろうと僕たちの子であることに変わりないんだから、愛してあげないと」とトゥエットさんを励ました。臨月に入るとトゥエットさんは身体が重くなり、1か所に横たわっていることしかできなくなった。トゥエットさんが苦しそうにしていると、そのたびにハイさんはトゥエットさんを抱きかかえて座ったまま眠った。
そして2人の子供、ザー・バオくんが2.6kgの体重で無事に誕生した。トゥエットさんは思い切って実家に電話をかけ、両親に孫の誕生を知らせた。しかし、心配していた通り、バオくんには生まれた時からいくつもの異常が見られた。
首にある嚢胞で呼吸がしにくかったり、手術が成功したかと思えば脚が曲がっていて関節が異常に大きいことがわかったりと、問題は山積みだった。「うちの子は短い距離しか歩けないんです。長い距離を歩いたら、地面に座りこんで息を切らしてしまうでしょう」とトゥエットさんは語る。
息子の薬代や治療費を稼ぐため、夫婦はホーチミン市ビンチャイン郡に生活の拠点を移した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行後、トゥエットさんは夫の稼ぎを補うべく宝くじ売りの仕事を始めた。トゥエットさんは毎日17時に家を出て、仕事が終わるのは深夜になる。多い日は10万VND(約590円)以上、少ない日は数万VND(1万VND=約59円)の稼ぎだ。
毎晩、ハイさんは子どもを寝かしつけてから妻の帰宅を待ち、2人で一緒に食事をとる。トゥエットさんはよく、夫の隣に横たわって、大変な人生を選んで後悔しているかと尋ねる。そのたびにハイさんはトゥエットさんの身体に腕を回し、「来世があったら、またこの人生を選ぶよ」と答える。
コロナ禍で何度か延期になった後、2022年末に2人はビンフオック省のトゥエットさんの実家で結婚式を挙げた。初めてドレスを着て口紅を塗ったトゥエットさんは、鏡の中の自分を見つめながら、時々手をつねってこれが現実だということを確認した。
「私は車椅子に乗らないといけないので、幼いころに夢見たように新郎と一緒にダンスを踊ることはできませんが、ハイさんがバージンロードに導いてくれて、生涯を共にすると誓ってくれただけで十分です」とトゥエットさん。
今のトゥエットさんの願いは、ランソン省にある夫の実家を訪ねることだ。しかし、健康状態が思わしくなく、まだ実現できていない。トゥエットさんはまた、その旅でバオくんがつまずいたり息切れしたりすることなく、自分のように1か所に座っているだけでもなく、2本の脚で走ったり飛び跳ねたりできたらと望んでいる。
その夢を実現するためには、バオくんは手術を受けなければならないが、夫婦には十分なお金がなく、いつ実現するかはわからない。「それでも、私たち夫婦が協力し合って、努力を続ければ、きっとその日は近いうちに訪れると信じています」とトゥエットさんは語った。