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8月18日、カンボジアのカジノで強制労働をさせられていた約40人のベトナム人が警備網を突破して集団脱走し、南部メコンデルタ地方アンザン省とカンボジア・カンダル州の境を流れるビンジー(Binh Di)川を泳いで帰国するという事件があった。
ビンジー川流域に暮らすマイ・バン・フンさん(男性・36歳)とゴ・バン・センさん(男性・38歳)は、カジノから逃げ出して川に飛び込み、水に流される人々を目にして、すぐにボートのエンジンを始動して救助に駆け付けた。
2人はそのときの混沌とした状況を今でも鮮明に覚えているという。
事件が起きた8月18日午前、ベトナム側のビンジー川岸でセンさんは養殖いかだの魚に餌をやり終えたところで、そのまま近くのいかだにいるフンさんのもとを訪れてお茶を飲みながらニュースを見ていた。
9時過ぎ、川の向こう側にある7階建てのカジノから叫び声が聞こえた。センさんとフンさんが声のほうに目をやると、数十人の人々が棒のようなものを持った警備員らに追われながら必死に逃げ、次々と川に飛び込む様子が目に入ってきた。2人からの距離は約150m。助けを求める悲鳴が響き渡った。
お茶を放り捨て、2人はいかだの近くに停泊させてあった全長5m余りのボートに駆け寄り、いつものごとくボートの調子が悪くないことを心の中で祈りながら、ホンダの4.5馬力のエンジンを始動した。「いつもは5回も7回も試してやっとエンジンがかかるのに、そのときは1回目で成功したんです」とフンさんは語る。
エンジンのかかったボートが川の真ん中までたどり着いたとき、逃げた人々は水に流されていた。センさんは泳げない人を優先して手を差し伸べ、ボートに引き上げた。ボートは3人乗せるともういっぱいだったが、川にはまだたくさんの人々が残されている。そこでセンさんとフンさんは、川の中にいる数人をボートにつかまらせ、ボートで引っ張ってベトナム側の岸に連れて行った。