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男性の身体を持って生まれたキム・トゥンさんは、自分に無理をしながら周りの人々のために男性として生きていた。しかしある時トゥンさんは、妹のイエン・ニーさんも女性の身体を持ちながら内面は男性であることに気づいた。
北部紅河デルタ地方ハイフォン市に住むレ・キム・トゥンさんとイエン・ニーさんは、チャン・ティ・タムさん(女性・52歳)夫妻の子どもたちだ。タムさんは、自分たちが2人の普通の子供を授かった普通の家族だと思っていた。
しかし、息子のトゥンさんが3歳になった頃、夫妻はトゥンさんがスカートとピンク色の服しか着たがらないことに気づいた。そしておもちゃで遊ぶ時はいつも母親役をやりたがった。一方、娘のニーさんはスカートを履かせようとすると泣いた。子供たちの頑固な様子に、タムさん夫妻は2人を棒で叩いて自分たちの思い通りに従わせることが度々あった。
父親は息子のトゥンさんにははっきりと大きな声で話すよう強制し、娘のニーさんにはスカートを履いて髪を長く伸ばすよう強いた。「従わなければ、父はすぐに棒を手に取りました」とトゥンさん。自分の内面の違和感を説明することができず、トゥンさんは1人の男性として生きようとし、髪を刈り上げたり、スニーカーを履いたり、集団で殴り合ったりもした。
それでも、トゥンさんは内面の女性的な部分を隠すことができなかった。幼馴染のハー・ズンさんによると、「攻撃的な瞬間があっても、しばらくするとクラスの女子よりも柔らかく話し、感受性の強い人」だったという。またトゥンさんはいつもズンさんに、将来は歌って女将軍を演じる俳優になりたいという夢を語っていた。
同じ学校の生徒たちはよくトゥンさんのことを「おかま」とからかった。「私は人に見られただけで自分がからかわれていると思ってしまうほど敏感でした。誰かが公然と私をからかったら走って彼らを殴りに行き、『兄貴』と呼ばせて自分が男であることを証明していました」とトゥンさん。
トゥンさんは殴り合った後、いつも部屋で1人泣きながら、どうして自分は人と違うのか理解できず苦しい思いをしていた。しばらくして、トゥンさんはハイフォン市ラジオ・テレビ局製作の短編映画に少年役として出演した。
しかし、男としての自分の姿を見るのが嫌で、トゥンさんはあえてその映画を観返すことはしなかった。その後、インターネットでトランスジェンダーのコミュニティと交流するようになり、トゥンさんはようやく自分の違和感の正体を理解した。