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「あの日の朝はまだ私と冗談を言い合っていたんですよ」と、ランさんは悲しげに夫が妻を置き去りにして旅立っていった日のことを振り返った。
2人は結婚して20年以上で、夫は建設作業員、妻は宝くじ売りとして働いていた。2人に子供はおらず、夫のTさんが脳卒中で倒れて半身不随となってから、2人の生計はランさんの宝くじ売りに頼っていた。それでもランさんは「夫がいるから私がいる」ということだけを考え、互いに頼りながら生活していた。
新型コロナの流行が拡大し始めると、ランさんはTさんを車椅子に乗せて、食べ物の施しを求めて10区のあちこちを歩き回った。
夫が車椅子の上で突然亡くなった日、ランさんは夫の遺体が包まれて運ばれていく様子を目にしてこの世の終わりのようにパニックになった。
夫が亡くなった10日後、ニーさんたちボランティアチームはランさんを連れてTさんの遺骨を引き取りにいった。10区軍事指導部の施設に入り、夫の名前が書かれた遺骨の箱を見つけたランさんは震えた。ランさんはようやく夫との再会を果たしたものの、新型コロナで亡くなった人たちの遺骨が集められた場所でのあっけない再会だった。
そこからビンチャイン郡にある寺まで車で移動する間、ランさんは遺骨をじっと見つめ、しっかりと手に抱いた。寺に着いて祭壇に遺骨を置くと、ランさんはまた泣き出し、細い両腕でニーさんの手にしがみついた。
ランさんはかばんの中から折り目がついたままの一式の服を取り出すとこう言った。「夫のために買ったんですが、着る機会がありませんでした」。そして、亡くなった夫のために服を燃やして欲しいと寺に頼んだ。
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ホーチミン市軍事司令部のスー・タン・フィー・ロン大尉によると、同市軍事司令部の作業部会が、新型コロナで亡くなった人の遺骨をビンタン区のビンフンホア火葬場から引き取り、移送する役割を担っているという。「我々は昼夜問わず働き、故人を自分の家族のように思いながら、心を込め、敬意を表して作業にあたっています」とロン大尉は語った。