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女性は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で亡くなった夫の遺体がビニール袋に包まれ、外に運び出されていく様子に背を向けた。
「棺は?」と聞かれ、「いえ、ありません。ご遺体は袋に入れて密封し、軍隊に引き渡して荼毘に付します」と、新型コロナによる死者の遺体の収容を担当するボランティアチームのメンバーの1人が言った。
故人の自宅はホーチミン市5区の古いマンションの2階にあった。住人たちが階段の手すりから、遺体が運び出されていく様子を見守っていた。
この3か月余りの間、ボランティアチームは昼夜を問わず、新型コロナで大切な人を失った遺族をサポートしてきた。
出発の数分前、ホアン・レ・クアン・チュオンさん(24歳)さんとボランティアチームのメンバーは事務所で線香に火をつけた。チームの仕事は毎日14時から深夜まで続く。
「14時30分ごろに到着します。死亡診断書を準備しておいてください」と、チュオンさんは電話の向こうの女性に告げた。
雨が降った後で泥だらけの未舗装の道路を横切り、チームはホーチミン市8区チンクアンギ(Trinh Quang Nghi)通りにある未完成のマンションの前に到着した。
「故人の自宅は5階です」。第2チームのリーダーであるトゥーさんが言った。チームはすぐに防護服を着て、消毒スプレーとストレッチャーを携え、遺族の案内に従って中に入っていった。
チームは数分間の儀式と手続きの後、遺体を注意深く袋で包み、エレベーターまで運んだが、ストレッチャーが長すぎてそのまま乗せることができなかった。そのため、5人で遺体をしっかりと抱きかかえてエレベーターで1階まで降りた。
「初めてご遺体を収容したときのことは忘れられません。ご遺体に触れると手が冷たくなったのを覚えています」とチュオンさん。チュオンさんの本業は銀行員だ。このボランティアの仕事を通じて、チュオンさんは心の奥底にある感情をより深く感じるようになった。「故人に接触するとき、ご遺体をきちんと包んで火葬場まで送り届けることで、ご遺族の悲しみも和らぐと思っています」。