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ベトナムの30VND札は、その数字から見ても珍しい紙幣だ。通常、硬貨は1・2・5の数字の額面とするルールがある。紙幣であれば1・2・5・10・20・50…だ。この額面にすることで、消費者は最も合理的な計算で希望額を組み合わせることができる。また、このルールを適用することで紙幣の印刷コストも削減できる。
しかし30VND札について「ベトナムの通貨の歴史」では、紙幣の形状や発行年の情報のみが記され、特別なコメントは書かれていない。
ベトナムでは1985年に通貨ドンを10分の1に切り下げ、新1VND=旧10VNDとしたことで激しいインフレが起き、予算が不足し、深刻な現金不足に陥った。
書籍によると、「流通貨幣は非常に多かった。統計によると通貨切り下げの1年後の1986年の時点で、流通貨幣は1985年の4.7倍に達し、1987年には前年比3.6倍、1988年には同5.3倍となり、1987~2000年にかけての追加発行につながった」という。
この現象が起きる前の、30VNDが2回発行された時期は、いずれも国がまだ貧しい頃で、計画経済に苦闘していた。1986年のドイモイ(刷新)前、1976~1986年ごろのベトナムは「配給(バオカップ=Bao cap)時代」で、当時はこれを脱するべきとの意見も出てきていたが、誰もが支持するものではなかった。
1979年には中越戦争が起き、ベトナムは国際社会から孤立し、経済的に困窮していたことを背景に、これを脱しようとする動きが生まれた。しかし、こうした動きは1983年までにむしろ経済的混乱につながった。
こうした状況の中、1985年に2回目の30VND札が印刷・発行されたが、1986年にドイモイが始まり、以降30VNDを目にすることはなくなった。