[特集]
2度の印刷後に発行停止、幻の30VND札の歴史
2021/08/22 10:22 JST更新
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ベトナムの30VND札は、過去に2度印刷・発行されたが、以後消えた幻の紙幣となっている。
ベトナム国家銀行(中央銀行)によると、1976年に南北が統一され、ベトナム社会主義共和国が成立した後の1978年に発行された通貨ドンは、それまで北と南で価値が異なる通貨ドンを使用していたベトナムにおいて、全国で同一の価値を持つ初めての通貨となり、ベトナムの通貨の歴史の新たなページを開くことになった。
それ以前は、1976年7月に南北の銀行システムが統合されたものの、一時的に北と南でそれぞれ独自の通貨ドンが流通していた。1978年に新たに発行された通貨は硬貨と紙幣があり、紙幣は5ハオ(hao、1VND=10ハオ)、1VND、5VND、10VND、20VND、50VNDの6種類だった。
「ベトナムの通貨の歴史」と題した書籍によると、1978年の発行後、1980年に中央銀行は2VND、10VND、30VND、100VNDの4種類を発行した。ここで誕生した30VND札は、紙幣のサイズが144mm×71mmで、ピンクがかった紫色のデザインだった。
同じ書籍によると、1985年に中央銀行はさらに紙幣を発行した。この発行に合わせて、1985年9月14日に通貨ドンの切り下げが行われ、新1VND=旧10VNDとなった。この時、硬貨は発行されず、5ハオ、1VND、3VND、5VND、10VND、20VND、30VND、50VND、100VND、500VNDの紙幣のみが発行された。
1985年に2回目として印刷・発行された30VND紙幣のサイズは150mm×75mm、ピンクがかった青色のデザインで、裏面にはホーチミン市にあるベンタイン市場の外観が描かれていた。
ベトナムの30VND札は、その数字から見ても珍しい紙幣だ。通常、硬貨は1・2・5の数字の額面とするルールがある。紙幣であれば1・2・5・10・20・50…だ。この額面にすることで、消費者は最も合理的な計算で希望額を組み合わせることができる。また、このルールを適用することで紙幣の印刷コストも削減できる。
しかし30VND札について「ベトナムの通貨の歴史」では、紙幣の形状や発行年の情報のみが記され、特別なコメントは書かれていない。
ベトナムでは1985年に通貨ドンを10分の1に切り下げ、新1VND=旧10VNDとしたことで激しいインフレが起き、予算が不足し、深刻な現金不足に陥った。
書籍によると、「流通貨幣は非常に多かった。統計によると通貨切り下げの1年後の1986年の時点で、流通貨幣は1985年の4.7倍に達し、1987年には前年比3.6倍、1988年には同5.3倍となり、1987~2000年にかけての追加発行につながった」という。
この現象が起きる前の、30VNDが2回発行された時期は、いずれも国がまだ貧しい頃で、計画経済に苦闘していた。1986年のドイモイ(刷新)前、1976~1986年ごろのベトナムは「配給(バオカップ=Bao cap)時代」で、当時はこれを脱するべきとの意見も出てきていたが、誰もが支持するものではなかった。
1979年には中越戦争が起き、ベトナムは国際社会から孤立し、経済的に困窮していたことを背景に、これを脱しようとする動きが生まれた。しかし、こうした動きは1983年までにむしろ経済的混乱につながった。
こうした状況の中、1985年に2回目の30VND札が印刷・発行されたが、1986年にドイモイが始まり、以降30VNDを目にすることはなくなった。
[Thanh Nien 06:22 09/08/2021, A]
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