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事故で左腕を失い、夫に裏切られても、困難を乗り越えて家業の理髪店の仕事を続け、2人の子供を育てている女性がいる。
ホーチミン市に住むレ・ティ・キム・チャムさん(女性・42歳)は、女性客の髪をバリカンで短くした後、ハサミでカットして細部を調整した。片腕しかないチャムさんにとって、3本の指でハサミを握りながら残りの2本の指を櫛のように使うという難しい作業だが、その動きはまるでハサミが踊っているかのようにリズミカルだ。そして10分も経たないうちにカットは終了した。
「私にとって、左腕を失ってからも子供たちを養うために片腕だけで理髪店の仕事を続け、安定した収入を得るなんて、夢のまた夢でした」とチャムさん。
チャムさんは今から4年前に左腕を失った。2016年8月のある朝、バイクで東南部地方ドンナイ省に向かう途中で転倒し、後ろから来たトラックに左腕を押しつぶされた。病院で目覚めた時には顔が変形し、左腕はなくなっていた。チャムさんは自分の傷口を見ようともしなかったが、病室にいる家族や他の患者が自分を見て涙を流すのを見て、事態を理解した。
チャムさんは自分の人生が「終わった」と感じ、今までの理髪店の仕事は続けられないだろうからと、宝くじ売りや食べ物売りの仕事をして生計を立てようと考えた。それでも心の中には、父親から受け継いだ理髪店の仕事を続けたいという想いもあった。
1か月間の入院中、チャムさんはいつも頭の中で「このヘアスタイルならどのようにカットしようか」、「左腕がなくてもカールを固定したままカットするには何を代わりに使おうか」などと考えを巡らせていた。
病院では毎日自分と同じような境遇の人を目にしていたため、チャムさんはコンプレックスを感じることもなく過ごしていた。しかし、退院して自宅に戻ってからというもの、いつも通り店を開き、アシスタントが接客をしていても、チャムさんは台所の後ろに隠れて表に出ようとしなかった。そして、皿洗いや料理、洗濯、着替えなど、今まで当たり前にこなしてきた簡単な家事が、二児の母であるチャムさんにとって苦しみに変わった。
1か月後、馴染みの男性客が散髪に訪れた際、チャムさんはタオルで身体を覆って表に出た。男性客が理由を尋ねると、チャムさんは自分の身に起きたことを話した。客は話を聞いて立ち去ってしまうと思われたが、突然「以前は両腕でカットしてもらっていたけれど、片腕しかないなら片腕でカットしてみてよ。僕の頭を練習台にして」と言って椅子に座った。