(C) vnexpress |
サムさんは毎日、髪を高い位置でお団子に結い、暗い色味の服を着て、近隣に住む人たちのためにバイクや自動車、電化製品を修理している。トラックやバス、クレーン車など、どんな種類の車でもひょいと飛び乗って運転することができる。
サムさんは経験豊富でありながら客に献身的で、客はそこに惹かれてやって来る。北部紅河デルタ地方ニンビン省ニンビン市在住のダン・ミン・ダオさんは、20年以上前に初めてサムさんに会った時の思い出を話してくれた。
ダンさんが車でザーラム郡を走行中に発電機が焦げてしまい、三叉路の途中で停まっていると、地元住民がサムさんの店を教えてくれた。しかし、スペアパーツがなく、サムさんは朝から夜の10時まで座ったまま電線を巻き続けた。
「とても細かい作業で、長い時間を要しました。私は待ちくたびれてしまって途中でカフェに行ったのですが、サムさんは私が急いで帰らなければならないと知っていたので、一杯のご飯を食べるとすぐに修理に戻っていました」とダオさん。以来、2人は連絡を取っていなかったが、昨年サムさんの夫が亡くなったことを知人から聞くと、ダオさんはサムさんに電報を送った。ダオさんは「サムさんの献身を忘れることはありません」と語る。
ここ何年も、病気の時を除いてサムさんはめったに店を休まない。「お客さんが来ても店が閉まっていたら、他の人に頼んでしまうかもしれないからね」と、旅行にも行こうとしない。
5年前のテト(旧正月)の大晦日の午後10時過ぎ、グエン・バン・ドンさんは勤務を終え、タインスアン区グエンチャイ(Nguyen Trai)通りの職場からロンビエン区の自宅まで車を走らせていたが、ゴックラム通りの近くに差しかかると突然車が故障した。ドンさんはサムさんの看板が目に入り、急いで電話をかけた。数回の呼び出し音の後、サムさんが電話に出た。サムさんは大晦日の食事を準備している最中で忙しかったが、孫にドアを開けさせて、修理の依頼を受けた。
「通りは人気がなく、どこのお店も閉まっていたので、誰か助けてくれる人はいないかと周りを見ていましたが、その間、サムさんは修理をしてくれただけでなく、燃費の良い運転方法まで教えてくれました」とドンさん。以前サムさんに交換してもらったバッテリーが壊れたため、ドンさんは最近もサムさんの店を訪れてサムさんと昔話をしたが、久々に会ったサムさんの髪はすっかり白髪に変わっていた。