(C) vnexpress 写真の拡大 |
(C) vnexpress 写真の拡大 |
次の年にはタン・フンさんの弟のグエン・タン・タインさんも大学生になり、兄弟2人で10年近くフンさんの家に居候した。「フンさんはたくさんの学生を受け入れていました。合計すると50人以上になると思います。卒業後も時々、世代を超えて集まり、フンさんを訪ねています。フンさんは私たちにとって家族のような存在で、お互いに冠婚葬祭にも出席しているんです」とタン・フンさん。
北中部地方ハティン省出身のチュオン・テー・リックさん(男性・28歳)は、半年前に大阪で正社員として働き始めた。リックさんは、4年前の自分と同じように苦しい環境にいる学生を支援するための資金として、毎月の給与の一部をフンさんに仕送りしている。貧しい学生だったリックさんは、フンさんのおかげで留学の夢を叶えることができたのだ。
リックさんは4年前、ホーチミン市人文社会科学大学の教育心理学科を卒業したものの、日本に留学することを夢見ていた。しかし、家族の経済状況は厳しく、農業を営む両親には4年間の学費だけでも苦労をかけたため、リックさんは日本への留学費用を自分で貯めたいと考えていた。
2016年のテト(旧正月)には故郷に帰らずホーチミン市でアルバイトをし、いつもよりも多く稼いで貯金に充てようと考えた。リックさんは節約をし、必要な額が貯まれば日本語学校に通い、その後にお金を借りて日本に渡航するつもりだった。
当初はホーチミン市内の娯楽施設で働く予定だったが、知人からビエンホア市のフンさんの店を紹介してもらった。最初は普通のアルバイトの面接として賃金などについて話し合っていたが、リックさんが留学の夢を叶えるためにテトも故郷に帰らず働こうとしていることを知り、フンさんはリックさんを雇うことに決めた。1か月ほど働くと、テト休みに入った。
「テトが明けて店を再開する日、フンさんは私に電話をかけてきて、まだ留学したいかとたずねました。そして、日本語学校の学費や渡航にかかる初期費用を支援すると言ってくれました」とリックさん。フンさんの家の住人たちから、フンさんがいかに親切か聞いてはいたものの、日本に行くには数億VND(1億VND=約45万5000円)という大金が必要で、知り合って1か月しか経っていない、いわば「見ず知らず」の自分を支援してくれるなどという話をすぐには信じることができなかった。