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「出願してみなさい。お母さんがついているから」とズンさんはホアンさんの背中を押し、それからは頻繁に電話をかけて励まし、時間があれば自宅を訪ねて話をし、ホアンさんの将来を導いた。ホアンさんが高校を卒業すると、ハノイ市に連れて行き、英語を勉強させた。それだけでなく、ズンさんは大学に手紙を書き、ホアンさんがいかに優秀な人物であるかをアピールした。
“私が手紙を書いた理由は、彼が謙虚でエネルギーに満ちた特別な人間であると同時に、自分を優先することを望まない人間だということを知っているからです。これは、彼の愛する人々から聞いた話に過ぎませんが……”と、ズンさんは手紙の中でホアンさんが視覚障害を持ちながらも学業での困難を乗り越えてきた過程や、常に優秀な成績を収めていること、そして視覚障害のない友人たちと登山をした時にも諦めずに山頂までたどり着いたことなどを紹介した。
2019年3月のある早朝3時、ホアンさんはフルブライト大学ベトナム校で4年間学ぶための学費22億VND(約1000万円)の援助を含む入学許可書を受け取った。ホアンさんは朝4時まで待ってから「お母さん、受かりました!」とズンさんに電話で報告した。
視覚障害を持つホアンさんの合格の結果は、カットボン基金の子供たちにさらなる希望をもたらした。自分と両親も視覚障害を持っているある子供は、ズンさんに手紙を書き、「どんな障壁も乗り越え、成功するために頑張ります。そうできると信じています。お母さん、私に夢を見るチャンスを、そして自分自身を信じる機会を与えてくれてありがとう」と希望に満ちた思いを伝えた。
ホアンさんの合格の後、2020年度にもカットボン基金から再び22億VND(約1000万円)の援助を含むフルブライト大学ベトナム校の合格者が出た。また、ロシアの奨学金を獲得した子供もいる。こうした功績から、ズンさんは孤児の子供でもケアを受けることで、より高く、より遠くへ飛んで行けるのだという希望を持つことができた。
300人近い子供たちの「母」であるズンさんは、幸せそうに笑いながら言う。「花の香りは自ら漂い、自力で広がっていきます。カットボン基金の精神もまた同じなのです」。