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他のランナーと同じように、マラソン大会に初めて参加したタムさんは緊張し、歩きながら「精神との戦い」も経験した。
「4km近くにさしかかったとき、とても疲れていて、脚も痛み、脚の断端が擦り切れているように感じました。誰かが『疲れたならバイクタクシーを呼べ、頑張りすぎるな』と言いました。そのとき、私の頭の中で『止まろうか』という考えがよぎりました。でも、自分がしたいことやそこに来た目的を思い出し、自分を励まして『もうちょっとだ』とつぶやきながらまた進みました」とタムさんは語る。
タムさんがこの大会に参加したのは、ただ自分に打ち勝つためだけではなく、障がい者を支援するためでもあった。障がい者や枯葉剤の被害者、地雷や不発弾の被害者などを助けるための募金活動に貢献するためだったのだ。この意義ある目的こそがタムさんの原動力になった。
「これまで同じ境遇の人々を助けるために何かをしたいと思ってきましたが、今回やっと少しでも役に立つことができました。これからはもっとたくさんの手助けができるよう、機会を見つけて頑張っていきます。私のように障がいのある人も、良い補装具と意志、決心があれば普通の生活に戻り、社会に貢献できると信じています」。
2009年、タムさんがドンタップ大学の数学教育学科を卒業して1年が経ったころに災難は降りかかった。学校を中退する生徒に学校へ戻ってくるよう話しに行った後、学校へ戻る途中でトラックにひかれ左脚に大けがを負ったのだ。大学を卒業したばかりの23歳の若い教師は、目の前の将来も人生も真っ暗になった。