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ハノイ市から60kmほど離れた郊外に位置するウンホア郡チャックサー村は、ハノイ市で最も長い歴史を持つアオザイの仕立て業で栄えた村だ。
過去には阮(グエン)朝(1802~1945年)最後の皇帝バオダイ(保大)帝(在位:1926~1945年)やナムフオン(南芳)皇后のアオザイを仕立てたことでも知られる。また、同村の最大の特徴は仕立て職人の約90%が男性である点だ。
女性は田畑で農作業を、男性は家の中でアオザイを仕立てる。冗談に聞こえるが、同村では長年続く人々の働き方だ。滑らかな身頃に走る繊細な縫い目を見て、それが男性の手によって縫われたものと分かる人は少ないだろう。
アオザイ仕立て職人のグエン・バン・ニエンさん(85歳)は、同村で男性がアオザイ仕立て職人になった経緯をこう語る。「昔は現在のように客が頻繁にアオザイを仕立てに来るという訳ではなく、村の人々は方々へ仕事をもらいに行ったものです。しかし、長距離移動は高齢者や女性には負担が大きく、男性だけが仕立て業を続けるようになったんです」。
チャックサー縫製合作社の責任者ギエム・バン・ダットさんは、同村に男性仕立て職人が増えた理由を、女性が別の村に嫁いで行くと伝統や技術が途絶えてしまうため、父親である職人らが息子に縫製技術を伝え次の世代へ受け継いできたと説明する。