[特集]
男性職人がアオザイを仕立てる村、父から息子へ技術受け継ぎ
2018/04/15 05:25 JST更新
(C) infonet.vn |
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ハノイ市から60kmほど離れた郊外に位置するウンホア郡チャックサー村は、ハノイ市で最も長い歴史を持つアオザイの仕立て業で栄えた村だ。
過去には阮(グエン)朝(1802~1945年)最後の皇帝バオダイ(保大)帝(在位:1926~1945年)やナムフオン(南芳)皇后のアオザイを仕立てたことでも知られる。また、同村の最大の特徴は仕立て職人の約90%が男性である点だ。
女性は田畑で農作業を、男性は家の中でアオザイを仕立てる。冗談に聞こえるが、同村では長年続く人々の働き方だ。滑らかな身頃に走る繊細な縫い目を見て、それが男性の手によって縫われたものと分かる人は少ないだろう。
アオザイ仕立て職人のグエン・バン・ニエンさん(85歳)は、同村で男性がアオザイ仕立て職人になった経緯をこう語る。「昔は現在のように客が頻繁にアオザイを仕立てに来るという訳ではなく、村の人々は方々へ仕事をもらいに行ったものです。しかし、長距離移動は高齢者や女性には負担が大きく、男性だけが仕立て業を続けるようになったんです」。
チャックサー縫製合作社の責任者ギエム・バン・ダットさんは、同村に男性仕立て職人が増えた理由を、女性が別の村に嫁いで行くと伝統や技術が途絶えてしまうため、父親である職人らが息子に縫製技術を伝え次の世代へ受け継いできたと説明する。
自身もこの道30年のアオザイ仕立て職人であるダットさんは、仕立て業で一番難しいのは、ほかの村のアオザイとは違うオリジナリティを出して客を惹きつけることだという。オリジナリティを出すには、アオザイを柔らかく滑らかに仕上げられるような縫製の技術が求められる。
アオザイは手で裾や袖口、ボタンなどをかがるが、この技術を身に着けるには5~10年を要するとダットさんは言う。手でかがるからこそ、ゆらゆらと風に揺れる柔らかなアオザイができるのだ。アオザイは多くの工程を経て仕立てられるが、熟練の職人であれば1日で1着を完成させることができるといい、仕立て料は種類によって15万~20万VND(約700~990円)ほど。
最近ではアオザイの種類やパターンも用途や着る人の嗜好に合わせて多様化しており、注文も増えているそうで、職人らは仕立てを学びたい人がいれば技術を伝授するとしている。テト(旧正月)の時期と結婚式シーズンである8~9月の繁忙期には、人を雇ったり夜通しで作業をして仕上げている。
一方で残りの約8か月ほどは注文が少なく、職人らも農業で生計を立てている。それでも、村の伝統技術、ベトナムの文化、民族の魂を次世代に残すため、アオザイ男性仕立て職人たちはグエン朝の皇帝のアオザイを手掛けたという村の誇りを胸に、国内各地、国外へ向けてアオザイを仕立て続ける。
[Minh Thuy, infonet.vn, 13:30 06/04/2018, T]
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