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勉強についていけず高校1年生で退学し、その後、技術訓練校に通った。はじめ、クアンさんは機械修理を学び、数か月後に店を開いた。しかし、事故に遭いわずか4か月後には店を畳まなければならなくなり 、約1年の治療を経てようやく回復することができた。
「回復後は家で過ごすしかなく両親の負担になっていると感じたので、ホーチミン市に行き散髪の勉強をしたいと申し出ました。はじめの頃は散髪の勉強をしながら携帯電話販売の仕事を掛け持ちし、専門学校を出た後はサロンで働きました。生活は安定せず、しばしば慈善で配布される弁当をもらいに行かなければなりませんでした」とクアンさんは語る。
一方で、散髪の専門学校に通っていた2004年から、クアンさんは友人らと一緒に孤児院、ろうあ学校、そして教会に住んでいる貧しい子供たちのために無料で散髪をしに行った。時には路上でパンを配ることもあった。
貧しい人々がどこから来ても、お店に一歩足を踏み入れれば同じように接客をする。スタッフは飲み水を出し、どのようなヘアスタイルにするか尋ね、しっかりと散髪・洗髪を行う。恩着せがましく傲慢な態度を取ったりは決してしない。
荷車運転手の50歳の男性は「ここで2回髪を切ったよ。初回は少し酔っ払っていたから、思い切って入ってみたんだ。もし普通の状態だったら、無料の看板が出ていても信じられなくて、入らなかったと思う。クアンさんは髪を切っても本当にお金を取らなかった。友達にもこのお店を紹介したよ」と教えてくれた。
お店が混んでいる時は別の美容師にカットさせるが、普段は1日約3人をクアンさんが自分で散髪している。客の多くは不快感を示すのではなく、クアンさんのこの活動を支援している。「私はもっと多くの貧困者にこのお店を知ってもらいたい。彼らの幸せな笑顔を見られればそれだけで私も嬉しいのです」。