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1000日に及ぶ路上生活を想像出来る人がどのぐらいいるだろうか。祖国を離れて、レストランを経営している人物が、かつて一文無しで、彼の地の言葉も全く話せなかったなどと誰が想像できるだろうか。しかし、その人物は1000日の路上生活を経て、地球の裏側にあるペルーで成功を収めたのだ。
件の人物グエン・ティエン・バンさんについて、人づてで聞いた話は信じ難いものばかりだった。彼の営むレストランを訪ね、実際に会ってみて初めて、彼がまさに数奇な人生を歩んできたことが実感できた。バンさんは、北中部ハティン省カムスエン群で生まれ、18歳の時、台湾人の雇い主のもとで遠洋漁業の仕事に就いた。2年の航海の間、彼は一度も家に帰ることができず、馬車馬のように働かされたという。1日20時間の労働を強いられ、空腹に耐えながら、ぼろぼろになるまで働いた。
2000年の終わり頃、彼は船上の苦しい生活に耐えかねて、ペルーの港に給油で寄港した際に船から脱走した。その時の所持金は僅か100ドル(約1万円)、身分証明書すら持っていなかった。たまたま降りた先がペルーだったが、スペイン語も碌に離せない状態だった。
所持金は数日で底をついた。食いつなぐために何とか日銭を稼がなければならなかったが、市場に行って身振り手振りで働きたい意思を伝えても、だれも雇ってくれる人はいなかった。そこで米を担いでいる人を見ると、すかさず代わりに背負ってあげるようにした。何人か地元の人が彼を哀れんで、時にはパンを、時には小銭を恵んでくれた。夜は路上で寝泊まりした。風雨を避けられる場所を探して体を休める毎日。夜は10度ぐらいまで下がる時もあり、新聞紙を毛布代わりにして寒さをしのいだ。