(C) nhandan, グエン・リー・フオン 写真の拡大 |
―審査員たちは、あなたが楽譜を非常に良く理解していると評価していました。
「今回のコンクールの課題曲は、5人の異なる作曲家の曲でした。時代もバラバラで、古典派もあればロマン派、印象派、現代音楽もありました。私の学校では音楽史の授業があり、様々な時代の作曲家について勉強します。演奏では、そこで得た知識を最大限に活用し、作曲家が楽譜に込めた想いを読み取り、再現するのです」
―まだお若いのに、深い研究の末に生み出された演奏なのですね。
「音楽の世界で他者と違いを生み出すのは、作品と向き合う心とセンスです。音を鳴らすだけなら誰でもできますからね。人と違った方法でやらなくてはなりません。それが最も重要で、決め手になると思います。ただ上手に演奏するだけの演奏者は星の数ほどいるのですから」
「中国の演奏者も同じです。技術的にはきっと彼らのほうが私より上でしょう。でも、彼らの演奏は機械的で無機質だと感じました。彼らはどんな難曲でも、ミスなく演奏するでしょう。しかし、それだけでは人を感動させることは出来ないのです」
―演奏時の他者との違い。それが今回の結果に繋がったということですね。
「私たちのように芸術に携わる者は、理論だけでなく実践しなければ意味がありません。私は幸運にもたくさんの演奏会に参加する機会を与えてもらっていますし、ステージ上での振舞い方も身につけることが出来ました。私はステージで演奏するだけの演奏者にはなりたくないのです。観客は演奏を聴きにきていますが、同時に観にきてもいるのです。ステージに立つ以上、完璧を目指したい。素敵な音楽の時間を体感してもらいたいのです」