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ホーチミン市11区フート(Phu Tho)通りで華僑が経営する茶店「ジーファット(Di Phat)」は、開店した当時の昔ながらの姿を約70年維持している。店の広さは約30m2、床はセメントタイルで、中国の伝統的な装飾の対連や福の神の像などが飾られている。
チャン・ズンさん(女性・87歳)の家族が、この店を開いたのは1950年代。ズンさんの夫は中国広東省潮州で茶の製造に携わっていた。サイゴン(現在のホーチミン市)で身を立てようと茶の工場で働き、開業資金を貯めたという。ズンさんの夫は約40年前に亡くなり、息子のクアック・フエさん(男性・58歳)が後を継いでいる。
ズンさんは以前のように店に立つことはなく、息子のお茶詰めを時々手伝うだけだ。ズンさんによると、この店の全盛期は1970年代で、当時はサイゴン全域にお茶を卸していた。今は贈答用として知人に売るのが主だという。店内には、開業当時から使っている木製のテーブルや椅子、アルミ製の茶箱、フランス製の天秤などがある。「売って欲しい」と言われることも多いが、どれも家族の思い出が詰まっている記念品なので断っている。
店では月に1回、主にジャスミン茶を約100kg、伝統的な方法で加工するほか、時に中国に出向いておいしい茶葉を輸入している。