ベトナムニュース総合情報サイトVIETJO [ベトジョー]
 ようこそ ゲスト様 

フォーブス選出「人々を最もインスパイアする女性トップ20」に宝くじ売りの老婆

2021/06/19 09:51 JST配信
(C) Vietnamnet
(C) Vietnamnet

 米系経済誌フォーブス・ベトナム(Forbes Vietnam)はこのほど、2021年の人々を最もインスパイアする女性トップ20を発表した。著明な経営者や学者、医師、芸能人、スポーツ選手が名を連ねる中、ひときわ異彩を放っている女性がいる。それが、宝くじ売りの老婆サウさんだ。

 サウさんの本名は、チャン・ティ・キム・ティアさん(63歳)。南部メコンデルタ地方ティエンザン省ゴーコンドン郡で生まれ育った。実家は貧しく、両親を早くに亡くし、34歳のときに生活のため、ドンタップ省タップムオイ郡に移り住んだ。

 独身を貫いており、子供もおらず、誰にも頼らず独りで生きてきた。若い時分は主に宝くじ売りで生計を立て、時々カシューナッツの皮むきのアルバイトもしていた。80年から90年代には、地域の女性組合や赤十字社の運動に参加。2002年からは、村の人民委員会が主催する子供向け水泳教室でコーチを務めている。

 最初の数年は、1クラス10人程度だったが、年を追うごとに生徒数が増えていき、この数年は1クラス50人~60人という人気コースとなった。1年間、水泳を習っても泳げなかった子供が、サウさんの指導のおかげで僅か数日で泳げるようになるなど、保護者からの評判は高まるばかりだった。

 水泳の指導は子供を水難事故から守ることにも繋がる。熱心に指導を続けてきたサウさんだったが、2020年には低血圧で倒れて、近所の人たちに病院に緊急搬送された。幸い命に別状はなかったが、周囲からのアドバイスもあって、この1年は宝くじ売りはしておらず、専ら子供たちに水泳を教えている。

 19年間、無償で水泳を教え続けたサウさん、これまでの教え子の数は4000人近くに上るという。

 「昔、宝くじ売りと水泳コーチをしていた時、大勢の人に馬鹿だと言われたわ。宝くじだけ売っていれば稼げるでしょう?ただで水泳を教えて何の得があるのってね。でも、テレビで子供が溺れ死んだというニュースを聞くたび、可哀そうに思うの。自宅を出れば、すぐ川が見えるわ。子供たちが溺れてしまわないように、泳ぎ方を教えたいの。それだけのことよ」とサウさんは語った。

 他人からすれば馬鹿げた行為だったかもしれないが、善行はいつの日か社会に認められるものだ。サウさんの活動は今では多くのメディアで取り上げられ、政府からも認められている。

 今は子供たちが夏休みなので、サウさんの水泳教室も忙しい。早朝に起きて食事を済ませ、午前7時にはバイクを走らせて水泳を教えに行き、また午後2時にも教室がある。保護者が忙しくて迎えに来れないときは、自宅まで子供を送り届けることもあり、帰宅が遅れる子供たちのために、ご飯を振舞うこともある。ただし、このコロナ禍の影響で、現在の生徒数は1クラス10人程度まで減少しているという。

 献身的なサウさんの社会貢献活動は、国内のみならず国際的にも評価されている。2017年には、英BBCによる世界に影響を与えた女性100人を選ぶ「100人の女性」に選出。2018年には、KOVAペイントグループ主宰の「KOVA賞」を受章。2020年には、ベトナム政府から第3等労働勲章を授与された。

 そして、2021年には冒頭で述べた通り、フォーブス・ベトナム(Forbes Vietnam)による2021年の人々を最もインスパイアする女性トップ20に選出。他の19人と比べると、サウさんには、権力や社会的地位がなく、高い学歴もない。しかし、子供を水難から守るというサウさんの活動は意義があり、地域社会への貢献度合いが非常に高いと評価された。

 今年63歳になるサウさんに、何歳まで水泳を教え続けるのかと尋ねたところ、「さてね。車輪が回らなくなったら、その時が辞め時かもしれないわね」と答えた。

[Vietnamnet 08:53 10/06/2021 U].  © Viet-jo.com 2002-2025 All Rights Reserved. 
※VIETJOベトナムニュースは上記の各ソースを参考に記事を編集・制作しています。 免責事項
新着ニュース一覧
首相、米国の関税対応で締結済みFTAへの配慮を指示 (11日)

 ファム・ミン・チン首相は10日に政府会合を主宰し、米国による相互関税措置への対応として、商工相を団長とするミッション団を11日中に編成するよう指示した。ベトナムと米国は、相互関税問題をめぐり、関税を...

ベトナムのオンライン販売者、AI活用率で東南アジアをリード (11日)

 電子商取引(eコマース=EC)プラットフォームの「ラザダ(Lazada)」の最新レポートによると、東南アジアにおけるEC市場でベトナムは人工知能(AI)の活用が最も進んでいる国であることが明らかになった。AIの活用率...

ベトジェット、AVエアーファイナンスと3億USDの契約 機材拡充 (11日)

 格安航空会社(LCC)最大手ベトジェットエア[VJC](Vietjet Air)は9日、米ワシントンD.C.で、米国の金融会社AVエアーファイナンス(AV AirFinance)との間で、3億USD(約440億円)の契約を

200年の歴史を有する毒ヘビ養殖村、高収入も危険と隣り合わせ (6日)

 ハノイ市の北西約50kmに位置する北部紅河デルタ地方ビンフック省ビントゥオン郡ビンソン村は、「ヘビ養殖村」として知られている。この村は、ベトナムの毒ヘビ(コブラ)の一大産地となっている。  高齢者の...

故ボー・バン・キエット首相のカム夫人が死去、科学者として活躍 (11日)

 2008年に85歳で死去した故ボー・バン・キエット首相の夫人ファン・ルオン・カム氏が9日早朝に死去した。82歳だった。  カム氏は1943年3月5日に北中部地方トゥアティエン・フエ省(現在のフエ市)で生まれた。...

ペトロベトナム、社名変更で新たな戦略へ (11日)

 ペトロベトナムグループ(Petrovietnam=PVN)は、9日付けで社名を正式に変更した。  新社名は以下の通り。 ◇ベトナム語:Tap doan Cong nghiep - Nang luong Quoc gia Viet Nam ◇英語:Vietnam National...

サイゴン動植物園、4月中は1975年と4月30日生まれは入場無料 (11日)

 ホーチミン市1区のサイゴン動植物園は、南部解放・南北統一50周年(1975年4月30日~2025年4月30日)を記念して、1975年生まれ、または4月30日生まれの来場者を4月中に入場無料とすることを発表した。  さらに...

ASEAN、米関税政策に共同対応へ 特別経済大臣会合 (11日)

 米国の関税政策に関する東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別経済大臣会合が10日午前にオンライン形式で開催され、2025年のASEAN議長国であるマレーシアが議長を務めた。ベトナムからはグエン・ホン・ジエン商工相...

「FTAインデックス」発表、ホーチミン14位・ハノイ30位 (11日)

 政府本部で8日午後、全国63省・市における自由貿易協定(FTA)の実施結果を評価する「FTAインデックス2024(FTA Index 2024)」の発表式が開催された。  ホーチミン市は30.46点で14位、ハノイ市は25.54点で30位...

24年の生活費指数、ハノイがトップ維持 ホーチミン3位 (11日)

 統計総局(GSO)がこのほど発表した「空間別生活費指数(Spatial Cost of Living Index=SCOLI)」2024年版によると、全国63省・市で生活費が最も高いのは前年に続きハノイ市となった。  これは、各省・市の物...

玩具大手レゴ、ビンズオン省で東南アジア初の「グリーン工場」開所 (11日)

 デンマークの玩具メーカー大手レゴ(LEGO)は9日、東南部地方ビンズオン省の第3ベトナム・シンガポール工業団地(VSIP 3)で玩具工場(第1期)の開所式を開催した。  同社にとって東南アジア初の工場で、最も環境...

ソースネクスト、通訳機「ポケトーク」生産拠点をベトナムに新設へ (11日)

 パソコン・スマートフォンソフトウェアおよびハードウェア製品の企画・開発・販売を手掛けるソースネクスト株式会社(東京都港区)は、人工知能(AI)通訳機「ポケトーク」の生産拠点をベトナムに新設する。  ...

ホンダベトナム、新型SUVと電動バイク2車種の発表会開催 (11日)

 ホンダベトナム(HondaVietnam=HVN)はこのほど、「グリーン・イン・モーション(Green in Motion)」をテーマに新製品発表会を開いた。  自動車では、スポーツ用多目的車(SUV)「HR-V」の新型を発表。バイクで...

レボインターナショナル、ペトロリメックスと連携・協力協定を締結 (11日)

 バイオ燃料やエンジニアリング、油脂資源開発などの事業を手掛ける株式会社レボインターナショナル(京都府京都市)は、ベトナム鉄道総公社(Vietnam Railways=VNR)の一部の機関車およびその他の機器に対するバイ...

ハノイ:「フォーフェスティバル2025」を開催 4月18日から (11日)

 ハノイ市の世界遺産タンロン城王宮跡(タンロン遺跡)で4月18日(金)から20日(日)まで、「フォーフェスティバル2025」が開催される。  同市の米麺「フォー」は昨年末、文化スポーツ観光省によって国家無形文化...

©VIETJO ベトナムニュース 2002-2025 All Rights Reserved