(C) vnexpress, 事故現場 |
ハノイ市ロンビエン区で2月29日に発生した自動車の暴走事故で、救急車が現場に到着したのは事故発生から20分後だった。更に、多くの通行人や野次馬がいたにもかかわらず、重傷を負った女児を誰も助けなかったことが目撃者の訴えで明らかになり、国内で賛否両論がわき起こっている。この事故で、女児を含む通行人3人が死亡した。
この事故で死亡したのは、チャン・ベト・ティエンさん(男性・64歳)、チャン・ザー・ハンちゃん(女性・6歳)、グエン・ティ・チュックさん(女性・55歳)の3人で、いずれも同区に住んでいた。ティエンさんは孫娘のハンちゃんを学校に連れて行くところだった。大人2人は即死、ハンちゃんは重傷を負い、病院に救急搬送される途中で死亡が確認された。
事故発生直後に地元住民が国家救急センターへ115番通報したが、事故が発生したのは通勤・通学のラッシュアワーで、救急車が現場に到着したのは20分後だった。救急車を待っている間、地元住民らは現場を通りかかった車やタクシーに支援を求めたものの、運転手はいずれも拒否し、現場から走り去った。
現場では、近隣民家の複数の防犯カメラが事故の瞬間を捉えていた。1人の男性がぐったりしたハンちゃんを抱きかかえて通行人に支援を求めるも、助けは得られず、倒れていたところにまた寝かせる様子も映っている。
インターネット上では、支援を拒否した通行人や運転手らに対して「非人道的」として強く非難する意見が相次いでいる中、的確な応急処置が必要だとして通行人や運転手らに同情する声も上がっている。
これについて、現場を通りかかったある女性運転手は、「女の子を助けたい気持ちはあったが、頭を強く打って重体のようだったので、下手に動かすともっと危険。救急車を待つべきだと思った」と陳情。同市ベトドク病院の医師も、「病院への救急搬送が早ければ早いほどよいのは確実だが、現場で的確な応急処置が必要なのもまた事実だ」とコメントした。
なお、現行規定では、遭難した人の支援を拒否した場合は50万~100万VND(約2550~5100円)の罰金を科し、危篤状態の人の支援を拒否した場合は刑事事件として立件し処分すると定められている。
ベトナムでは、救急車を呼んでも渋滞などで到着するまでに時間を要する場合がある。また、救急車が通過する際の道の譲り方といった教育が徹底していないのも現状だ。ベトナムの救急救命事情については、ベトジョーライフ(VIETJO LIFE)の「ベトナムの救急救命事情~危機管理を忘れずに!~」を参照。