―――ベトナムで活動し始めてから、一番印象に残っているお仕事を教えてください。
井手:ベトナムに住み始めて初めてネタをやらせてもらった時です。住み初めて3週間くらい経った頃、「Touch FES」という日越文化交流イベントに出させてもらえることになって、「もうベトナムでステージに立てるんだ!」とすごく嬉しかったのを覚えています。でも冷静になってみると、ベトナム語なんて全然できないしどうしよう、と。結局、画用紙に台詞を書いて、それをお客さんに見せながらネタをやるということで事なきを得ました(笑)。でもその時に感じたのは、「ステージって楽しい!」ということ。お客さんのリアクションも良いし、何よりも下手くそなベトナム語を話す謎の日本人2人をお客さんが助けてくれて、その場で発音を直してくれたり、一緒にステージを盛り上げてくれました。あの時の一体感は今までで1番だったかもしれません!特に、ドラえもんの歌を歌うとほとんどの人が知っているので一緒に歌ってくれて、あの頃は「ドラえもん最強」が僕ら2人の合言葉になっていました(笑)。
中川:僕はやっぱり、ベトナムのテレビ番組でMCのポジションに立てたことですね。大きなテレビ局ではなかったのですが、こんな経験、僕らクラスの芸人では日本にいたらできませんから。だからこそすごく嬉しかったです。でも、実力不足もあり、1年ちょっとで終わってしまいました。返り咲きたいですね!
ホーチミン市のイオンモールでのイベント
―――日本人とベトナム人、笑いのツボは違いますか?もし違う場合、どういった点が違うと感じられますか。
中川・井手:違いますね!ベトナム人は、物事をストレートに受け取る方が多いですね。
中川:日本のお笑い界では「『押すな押すな!』は『押せ!』」の合図ですが、ベトナムでは「『押すな押すな!』は『押すな!』」です。これには最初驚きました。ある番組で、カズがプールに落ちて僕が助けに行き、手を差し伸べました。そこで、僕は日本のノリで周りに「押すなよ!押さないでよ!絶対押すなよー!」と言うと、あわてて何人ものスタッフが入ってきて、僕を羽交い締めにするぐらい守り、カズもスタッフに助けられていました。
井手:「嘘(本当でないこと)」が通じません。「押すな押すな!」で本当に押してしまえば、「なぜ押すなと言っているのに押してしまうの?」と捉えられます。また、ステージ中に相方が早着替えで女装して出てくるネタがあるんですが、お客さんの中には相方が本当にゲイだと思った人がいたようで、「LGBTの問題を取り入れたネタで今の社会を切っていて面白かった」という感想をもらったことがあります。逆に、ダジャレやうまいことを言ったりする、言葉遊びのような賢いネタのほうが面白いと感じてくれるようです。
ホーチミン市のイオンモールでのイベント