バウさんがベトナムに帰国する意志を伝えると、ヤンさんは妻が中国に二度と戻ってこなくなることを恐れて、一緒にベトナムへ行くことにした。そして、バウさんは22年ぶりに故郷のタンアン町に帰った。しかし、故郷に着いても道を覚えていなかったため、市場に行って自分を知っている人を探すか、知人に出くわすのを待つしかなかった。
(C) vnexpress, Tien Hung, バウさん(右)と夫のヤンさん(左) |
(C) vnexpress, Tien Hung, バウさん(左)と母親のグーさん(右) |
幸運なことに、村の多くの人々がバウさんのことを覚えていた。22年間も行方不明になっていた女性が戻ってきたという知らせはすぐに村中に広まった。母親のグーさんもその知らせを聞き、大喜びで娘を迎えた。グーさんはここのところ体も弱り病気がちだったが、娘に会えたことですっかり健康を取り戻した様子だ。
22年ぶりに娘と再会したグーさんは、声を震わせて話した。「バウがいなくなってから、私は2か月以上あちこち探し回りましたが、見つけることはできませんでした。占いで見てもらうと、娘は死んだので仏壇を置きなさいと言われましたが、私は信じませんでした。生きている予感がしたのです。この22年間、私は娘が帰ってくるよう毎晩祈っていました。そしてついに、私たち親子は再会することができたのです」。
バウさんがいなくなってからベトナム人の前夫も姿を消してしまったため、グーさんが孫2人を育てていた。しかしながら生活は厳しく、数年後にグーさんは泣く泣く孫2人をカナダ人夫婦に養子縁組に出した。現在2人は海外で安定した暮らしをしており、時々グーさんを訪ねに帰って来るという。
年老いた母から2人の息子の話を聞き、バウさんは涙を流した。「この22年間、母と2人の息子に会いたいと、それだけを切望していました。今は息子たちとも離れ離れになってしまい、いつ会えるのかもわかりません。私の顔を覚えているかどうかもわかりません」。
バウさんは数週間後に中国に戻り、その後また機会があれば故郷を訪ねるつもりだと教えてくれた。「きっと次に娘が戻ってきた時には、私はもう死んでしまっているでしょうね」。グーさんは娘の隣に座りながら、かすれ声で言った。