2月中旬のとある日、南中部沿岸地方クアンナム省ヒエップドゥック郡タンアン町にある小さな家で、ファム・ティ・バウさん(女性・53歳)は23年間にわたり生き別れとなっていた2人の息子、ファン・バン・フオンさん(26歳)、ファン・バン・ビンさん(25歳)との再会に喜びの涙を流した。
(C) VnExpress, 右から養父、ビンさん、バウさん、フオンさん、中国人夫 |
バウさんはかつて南中部地方クアンガイ省ソンティン郡である男性に嫁ぎ2人の息子を授かり幸せな生活を送っていた。しかし1994年の4月頃、近隣省へ果物を売りに行くため乗り合いバスで移動中に誘拐され、中国に売られてしまった。
幸いにもバウさんを買い妻として向かい入れた年下の中国人青年は、バウさんを愛し大切にしてくれたが、色々な事情もあり2016年になって初めて念願のベトナムへ里帰りが実った。
親族に会い2人の息子について聞くと、困窮した生活のため親族は息子たちを南中部沿岸地方ダナン市の孤児院へ送られたことが分かった。孤児院へ問い合わせると息子たちはしばらく施設で生活した後にカナダ人夫婦の養子となり、現在も施設と連絡を取り合っているとのことだった。
バウさんの里帰りは広く報道され、これを知ったフオンさんとビンさんは養父と共に2月12日バウさんが住む家を訪れ23年ぶりの再会を果たした。母と子はきつく抱き合い、感無量で言葉が出てこなかった。2人の息子は幼少時にカナダへ渡ったことからベトナム語が分からないため、通訳を介して会話した。
現在フオンさんは船舶操縦士になり、ビンさんは美容師の勉強中だ。カナダ人夫婦は当初ビンさんだけを養子にするつもりでいたが、フオンさんが弟と離ればなれにしないでくれと大きな声で泣いて訴えたそうだ。
バウさんと中国人の夫はタンアン町で暮らすことを選び、小さな家を借りて住んでいる。いずれは商いをするため、今は地元の人に雇ってもらい資金を貯めている。
バウさんはベトナムの戸籍を喪失してしまっているため、夫婦は3か月に1度東北部地方クアンニン省モンカイ国境検問所で在留期限の延長手続きをしている。「夫もベトナムで暮らすことに同意しているので、起業するために土地を支援していただけたら…」と、バウさんはベトナムでの生活の立て直しを切に願っている。