医学を志す大学生の解剖実習のため、大学に運ばれた遺体を受け取り、洗浄した後に化学薬品を注入し、ホルマリンに浸ける。この遺体処置を専門とする職業に就く男性がいる。
(C) vnexpress, Le Nga, ハノイ医科大学の遺体安置室 |
(C) vnexpress, Le Nga, ラムさん |
ハノイ医科大学の解剖実習用遺体安置室は、ハノイ市ハイバーチュン区タンバットホー通りにある校舎の2階に位置する。階段を2階まで上って右に曲がると、学生の解剖実習室だ。学生の実習が終わった後、1人の男性がステンレス製の棺を一心不乱に磨いている。彼の名はズオン・ゴック・ラムさん。ハノイ医科大学の遺体安置室の職員だ。
ラムさんは50歳だが、実年齢よりずっと若く見える。遺体安置室で30年間働き続けている彼は、誰かに吐露したい多くの思いを抱えている。しかし、彼の話を聞いたことがある人はわずかだ。この仕事は人から批判され、軽蔑され、怖がられてしまうため、話すことができないのだとラムさんは教えてくれた。
彼は19歳の時に医科大学で働き始めた。主な仕事内容は、大学の教員や学生の研究と学習のために献体された遺体を受け取り、処置を行い、見守り、保管することだ。初めて遺体処置に参加した時、ラムさんはあまりの恐ろしさに手足が震え、まともに仕事ができなかったという。
家に帰っても何も食べることができず、寝ようとしてもぞっとするような画像が頭に浮かんで眠ることができない。そのような状態が2年ほど続いた。その間、何度も辞めようと心に決めたが、両親や親しい人たちから励まされた。3年目に入ると仕事にも慣れ、恐怖心も薄れていった。