マーケティングというのはどのような商品にせよ難しいものだが、「棺桶」となるとそれは困難を極める。棺桶を売りつけにきた者に快く対応する人はおらず、災いを運んできた思われても仕方ないからだ。従って、普段棺桶を売り歩くセールスマンに出くわすことはない。それが今いくら「熱い」ビジネスだとしても。
(C)Bao Dat Viet, フンさんの制作した西洋風棺桶 |
(C)Bao Dat Viet, 中流層に好まれる螺鈿柄 |
「棺桶業界」は他のどの業界よりも調査に余念がない。誰かが亡くなりそうだという情報を小耳に挟むと、家庭の状況や階級、親族関係まで全て調べあげる。簡単そうだが、実際にやってみるとかなりやっかいだ。
「本人について調べがついたら、次は親戚を調べて接待攻勢。事前投資ですよ。情報をつかんだらとにかく食らいつく。でも、そうやって契約にこぎつけても、割引しろといわれたんじゃ、採算があわないよ」と、ハノイ市ザーラム郡のフンさん(42歳)は教えてくれた。
彼によると、この商売は大きな工房はなくとも、ある程度の資金があり、とにかく「手先」と「口」が器用でないと「並」の仕事しか請けられず、高い利益を得られないという。彼は紅河デルタ地方バクニン省トゥーソン町に弟のズンさんと共同で出資した工房を所有している。