ベトナムを代表する歴史学者・考古学者で、ベトナム社会科学研究所傘下考古学研究所の所長も務めたハー・バン・タン(Ha Van Tan)氏が27日21時02分、ハノイ市の老人病院で死去した。82歳だった。
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タン氏は、故ディン・スアン・ラム(Dinh Xuan Lam)氏、故ファン・フイ・レ(Phan Huy Le)氏、故チャン・クオック・ブオン(Tran Quoc Vuong)氏と並んで、現代のベトナム歴史学の基礎を築いた「四天王」の1人として知られる。
タン氏は1937年8月16日生まれ。現在の北中部地方ハティン省ギースアン郡ティエンディエン町(thi tran Tien Dien, huyen Nghi Xuan)出身で、学者の一族に生まれた。中学卒業後にハノイ市へ移り、大学に入学。歴史学の道を志し、大学卒業後は大学で教鞭をとった。
1982年から2009年まで現在のベトナム国家大学ハノイ校(ハノイ国家大学)傘下人文社会科学大学歴史学科における史学方法論部門の主任を、1988年から2008年まではベトナム考古学研究所の所長を務めた。
1980年に教授となり、人民教師の称号、1等労働勲章、3等労働勲章、2等対米抗戦勲章を受章したほか、科学技術分野でホー・チ・ミン賞を受賞。歴史学と考古学に留まらず、言語学や文化学など多くの分野に精通し、韓国語やフランス語、英語、ロシア語、ドイツ語、日本語、サンスクリット語も独学で習得した。
1960年、若干23歳のときに、グエン・チャイ(Nguyen Trai)が著した「與地志」の解題・校訂・注釈を手掛けたほか、ブオン氏との共著により「ベトナムにおける原始共産制度の歴史」を出版。ブオン氏とは「ベトナム封建制度の歴史」、「ベトナム原始考古学の手引き」などを著した。
また、露越対訳の考古学用語集や、考古学の基礎、ドンソン文化、考古学における統計などに関する多数の著作があり、300本にも及ぶ論文も残している。1991年にはベトナムの考古学史や旧石器~鉄器時代に至るまでの概説をまとめたタン氏の著作が考古学者の菊池誠一氏により翻訳され、「ベトナムの考古文化」として日本で出版されている。
タン氏はここ数年、脳卒中を患い病と闘っていたという。関係者からは、ベトナムの歴史学、考古学、そして社会科学の分野にとって大きな喪失だと悲しみの声があがっている。