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クックさんは南部メコンデルタ地方ベンチェ省出身で、生計を立てるために若くしてホーチミン市に移り住んだ。グエントゥオンヒエン通りで花を売って、もう50年近くになる。
クックさんの花屋は自宅から数十mのところにある。店といっても、プラスチック容器に入った数種類の花と、包装資材やかご、ビニール袋、段ボール箱、スクラップなどが雑多に置かれただけの小さなスペースだ。他の花屋のように、花の種類が豊富なわけではないが、1本1万VND(約60円)と手頃な価格で販売している。
クックさんは、花を売るのは何も難しいことはないと話す。疲れたら休む。売り切ったら、バイクタクシーに乗って10区のホーティキー市場に行って花を仕入れ、また売る。安く仕入れて安く売るため、利益はほとんどない。
クックさんはこう語る。「1日に10万VND(約600円)の売上が出る日もあれば、5万VND(約300円)の日もありますし、売上がゼロの日もあります。もう何年もずっと、そうやって食費を稼いできました。3食食べる日もあれば、2食の日もあります」。
2人の息子に言及したときだけ、クックさんの声のトーンはどこか少し下がった。クックさんは、息子たちに十分な教育を受けさせる余裕がなく、1人は高校3年生まで、1人は中学4年生(日本の中学3年生に相当)までしか学校に行かせることができなかった、と悲しげに話す。
現在、息子たちは配車アプリのバイクタクシーの運転手をしており、経済的に自立している。クックさん自身も花屋の仕事で日々の生活費は何とかまかなえているため、息子たちに経済的に頼るつもりはない。
「昔の生活のほうが、今よりもずっと大変でした。今は食べるものも着るものもありますし、自分は幸運で、安定しているほうです。通りすがりの人が、食べものをくれることもあるんです」とクックさん。
老後について聞かれると、クックさんは「そのときになったら考えます」と笑って答えた。「そのとき」が少しずつ近づいていてもなお、クックさんは自分の人生を振り返り、「苦難があれば耐える。しょうがないでしょう」と楽観的だ。