[特集]
寝床は道端の椅子、幅1.5mの超狭小住宅に暮らす女性
2024/05/05 10:22 JST更新
(C) dantri |
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ホーチミン市3区のグエントゥオンヒエン(Nguyen Thuong Hien)通りに面した一角に、幅わずか1.5mという住宅がある。
チュオン・ティ・クックさん(女性・1950年生まれ)はこの住宅に暮らして長いが、あまりにも狭く、さらに家具がぎゅうぎゅうで、生活もままならず、ゆっくり寝ることもできない。そのため、クックさんは20年近くもの間、道端で営んでいる花屋の片隅に折りたたみ椅子を置いて、そこで睡眠をとっている。
このあたりの住宅はどこも狭いが、クックさんの家は特に際立って狭く、通行人の目を引いている。こんなにも狭い家で住人はどうやって暮らしているのだろうかと、誰もが疑問を抱く。
クックさんによると、この住宅は1975年ごろに知人から引き受けたもので、オーナーは既に亡くなっているという。かなり老朽化が進んでおり、上の2つのフロアは雨や日差しを避けるスペースを作るために家族が「継ぎ接ぎ」したものだ。
幅も狭ければ奥行きも2mほどしかないため、通りからのぞくと家の中が丸見えだ。家の中で最も大きな面積を占めているのはおそらくトイレで、クックさんが毎日使う唯一の場所でもある。
「私には2人の息子がいて、1人は1985年生まれ、もう1人は1990年生まれです。2人はそれぞれ別の階に住んでいますが、狭いので横になるのがやっとで、他には何もできません。私は年がら年中、道端にある自分の花屋にいます。家は狭いし、外で寝るほうが快適なんです」とクックさんは語る。
夫は何年も前に亡くなった。当時は息子たちもまだ小さく、クックさん自身も若くて体力もあった。今や息子たちは大きくなり、クックさんは脚も身体も痛むため、上の階に行くこともできない。
クックさんが毎日家ですることといえば、風呂と洗濯の2つだけだ。それから店に出て花を売り、店で食事も睡眠も済ませる。雨の日も外の椅子で過ごすが、濡れないように雨避けをつける。
クックさんいわく、家が狭すぎて料理も大変だ。そのため、毎日クックさんは食堂で食事をし、息子たちも自分の食事は自分で何とかしている。
クックさんは南部メコンデルタ地方ベンチェ省出身で、生計を立てるために若くしてホーチミン市に移り住んだ。グエントゥオンヒエン通りで花を売って、もう50年近くになる。
クックさんの花屋は自宅から数十mのところにある。店といっても、プラスチック容器に入った数種類の花と、包装資材やかご、ビニール袋、段ボール箱、スクラップなどが雑多に置かれただけの小さなスペースだ。他の花屋のように、花の種類が豊富なわけではないが、1本1万VND(約60円)と手頃な価格で販売している。
クックさんは、花を売るのは何も難しいことはないと話す。疲れたら休む。売り切ったら、バイクタクシーに乗って10区のホーティキー市場に行って花を仕入れ、また売る。安く仕入れて安く売るため、利益はほとんどない。
クックさんはこう語る。「1日に10万VND(約600円)の売上が出る日もあれば、5万VND(約300円)の日もありますし、売上がゼロの日もあります。もう何年もずっと、そうやって食費を稼いできました。3食食べる日もあれば、2食の日もあります」。
2人の息子に言及したときだけ、クックさんの声のトーンはどこか少し下がった。クックさんは、息子たちに十分な教育を受けさせる余裕がなく、1人は高校3年生まで、1人は中学4年生(日本の中学3年生に相当)までしか学校に行かせることができなかった、と悲しげに話す。
現在、息子たちは配車アプリのバイクタクシーの運転手をしており、経済的に自立している。クックさん自身も花屋の仕事で日々の生活費は何とかまかなえているため、息子たちに経済的に頼るつもりはない。
「昔の生活のほうが、今よりもずっと大変でした。今は食べるものも着るものもありますし、自分は幸運で、安定しているほうです。通りすがりの人が、食べものをくれることもあるんです」とクックさん。
老後について聞かれると、クックさんは「そのときになったら考えます」と笑って答えた。「そのとき」が少しずつ近づいていてもなお、クックさんは自分の人生を振り返り、「苦難があれば耐える。しょうがないでしょう」と楽観的だ。
[Dan Tri 06:00 23/04/2024, A]
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