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息子の願いを前に、母親のハーさんは不安を感じた。なぜなら以前、医師からリンさんは毛穴がなく十分に汗をかけないため、運動を制限するよう忠告を受けていたのだ。それでも、クラスメイトが皆自転車に乗って通学しているのを見ると、リンさんは気持ちを抑えられなかった。
毎日午後になると、母親の指導を受けながらリンさんは自転車に乗る練習をした。最初の頃、特に日差しの強い日は頭が燃えるような暑さを感じた。ペダルを漕ぐほど暑くなり、顔は赤くなった。疲れると、息を切らしながら休憩した。
「テレビを観ていたら、自然界には汗腺を持たない動物がいて、暑い時は体温を下げるために舌を出して口で呼吸する、というのを知ったんです」とリンさん。以来、リンさん自身もその方法を応用しているという。1週間の練習を経て、リンさんは上手に自転車に乗れるようになった。リンさんが7歳になったばかりの時だった。
15歳になった今もまだ火傷の痕は残っているが、リンさんは若者の流行りのファッションを楽しんでいる。リンさんはスポーツ系の服を着て、韓国の音楽グループの曲に合わせて踊るのが好きなのだという。
自宅ではお兄ちゃんとして、母親が外出している時は弟の面倒を見たり、食事の支度や掃除をしている。9歳の弟は、もしリンさんが火傷を負わなかったらどんな顔だったのだろうかと想像し、兄の絵を描いたりもする。弟の絵では、兄は大きな丸い目をしている。弟の絵を見るたびに、リンさんは笑いながら「何はともあれ、生きているだけで幸せだよ」と、自分自身にも言い聞かせるかのように弟に伝えている。
リンさんは中学4年生(日本の中学3年生に相当)の時、消防士になりたいという夢を母親のハーさんに語ったことがある。しかしハーさんは、リンさんの身体では消防士になることはできないと諭した。母親の思いを理解し、さらにシングル家庭で生活が苦しいという事情も理解しているが、それでもリンさんは大学進学を目指して勉強を続けている。
リンさんは、もうじき再び韓国で大きな手術を受ける予定だ。ハーさんはこれまでと同じようにリンさんが手術前にご褒美をねだり、手術から目覚めた時、隣に立っている母親の姿を見て明るく微笑んでくれることを望んでいる。