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そして今から6年前、ナムさんの息子は貧しさからタイに出稼ぎに行くことを決め、タムさんに高齢の母親の面倒を見てほしいと頼んだ。しかし、息子がタイに行って間もなく、ナムさんは脳卒中を起こし、両脚が麻痺してしまった。
それまでナムさんとタムさんは別々に暮らしていたが、タムさんは介護がしやすいようにナムさんの貸し部屋に引っ越して、一緒に住むことにした。以来、タムさんは毎日、食事や身の回りの世話からマッサージ、おむつ交換まで、ナムさんの世話をしている。その頃から、タムさんはナムさんのことを「お母さん」と呼ぶようになった。
当初、ナムさんの実の息子は母親に生活費を仕送りしていたが、ここ3年間は新型コロナの影響で仕送りもできず、帰国することもできないでいる。ナムさんを放っておくわけにもいかず、親友との約束も反故にしたくなかったタムさんは、少しでも節約するためさらに小さな貸し部屋に引っ越し、いつもナムさんのそばにいられるよう宝くじ売りの仕事をすることにした。
「私はまだ独身なので、めいっぱい母の世話ができています。人にはそれぞれ困難があることもわかっているので、親友を責めるつもりはありません」とタムさん。
「母と子」の1日は、300枚の宝くじとともに始まる。2人はいつもビンチュン通りとグエンドンティエット通りの角にあるお寺か、自宅から2Km離れたところにあるトゥードゥック市のレバンティン病院の周りで宝くじを売っている。道すがらは2人で資源回収(ベーチャイ=ve chai)もする。
昼になるといったん自宅に帰り、ナムさんを休ませ、午後の仕事に出かける前に食事をとる。休憩中、タムさんはよく携帯電話でベトナム南部の民謡を取り入れた伝統歌劇「カイルオン(Cai Luong)」を流してナムさんに聴かせたり、ナムさんのそばで手足のマッサージをしてあげながら2人でおしゃべりをしたりする。