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ホーチミン市在住のグエン・マイ・バン・タムさん(男性・43歳)はこの6年間、親友の母親であり両脚に麻痺を患っているグエン・ティ・ナムさん(86歳)の介護を、親友に代わって続けている。
6月はじめのある朝、ホーチミン市直轄トゥードゥック市グエンチュングエット通りにある小さな貸し部屋で、タムさんは力を振り絞ってナムさんを抱き上げ、電動三輪車の後部座席にそっと乗せた。自分は前に座り、三輪車を運転して仕事に向かう。
「ナムさんは私の親友のお母さんなんです。私とナムさんとの間に血縁関係はありませんが、きっとこれも運命なんでしょう」とタムさんは語る。
タムさんは貧しい家庭に生まれ、小学校を卒業する前に学業を離れた。13歳の時に母親が亡くなり、それからは自分で生計を立てなければならなくなった。最初はホーチミン市中心部の路上で外国人観光客を相手に土産物などを売った。その後は卸売やレストランの接客をし、建設作業員としても働いた。
今から20年余り前、タムさんはナムさんの息子と知り合った。当時、ナムさんはホーチミン市4区に自宅があり、タムさんはよく遊びに行っては毎週のように泊まったり食事をふるまってもらったりしていた。「ナムさんは私に、家族のように接してくれました。寝るときにクーラーをつけてくれたり、服を洗濯してくれたり。食費も取りませんでした」とタムさんは当時を振り返る。
その後、ナムさんの家族は困難な状況に陥り、事業で損失が出て自宅を売却しなければならなくなった。娘が結婚して家を出ると、ナムさんはひとり息子と貸し部屋に住むことになった。ナムさんの娘たち3人はというと、1人は交通事故に遭い、1人は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で亡くなり、もう1人は生活が苦しく母親の面倒を見ることができない状況だという。