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東北部地方ランソン省に住むクインさん(女性・28歳)は、数百kmを越えて、ハノイ市の教室で歌を学んでいる。吃音があるせいで子供の頃から自分に少し自信がなかった彼女は幼稚園で働くようになったのだが、パーティーなど定期的に催されるイベントのおかげで、自信のなさが余計に膨らんでしまった。
「歌が下手なので、いつも断っていました。カラオケに行っても、フルーツ盛りを見て、拍手をするだけ」とクインさん。あるときの幼稚園の忘年会では、皆で二次会にカラオケに繰り出したのだが、「皆で大盛り上がりしている時に、『子供が小さくて、夫も厳しいから』と言って先に帰りました」と彼女は言う。
そんな自分にやるせなさを感じていた彼女は、その後しばらくして「カラオケ教室」の広告を目にする。「これだ!」とひらめくや連絡先に問い合わせ、一気に3コース分を申し込んだ。料金は総額1200万VND(約6万7000円)、彼女の給料3か月分だった。
地方住まいであるため、授業は主にオンラインで受けている。音痴の気持ちなどきっとわかってくれないだろうと、歌の勉強を始めたことは、夫には黙っている。夫は遠距離で仕事をしており、帰宅も週1度。練習中に夫が帰ってくると、すぐに練習を抜けて見つからないようにしている。
ハノイ市で声楽・カラオケ教室を営むゴックさん(男性)によると、ベトナム人は社交的で歌うことも好きだが、自分の歌声に自信がある、という人はそう多くはない。
教室に来る生徒は、年齢も職業も様々だが、最も多いのはオフィスワーカーとリタイア組。ゴックさんの教室には、全国各地から人が通い、中には外国で働いていたり、外国に移住した人もいる。