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南中部沿岸地方カインホア省ニャチャン市では、時が経つにつれて伝統的なバインミー窯が減り、代わりに短時間で焼けて便利で生産性の高い電気オーブンを使うようになっている。しかし、今でも伝統的な窯焼きバインミー作りに情熱を燃やし、この製法を守り続けている人がいる。
午後遅く、他の皆が全員帰ったころ、グエン・バン・トーさん(男性・51歳)はまだ熱々のバインミー窯のそばにいた。痩せて浅黒い顔は汗だくだ。バインミーに火が通ると2本の長い木の棒を手に持ち、黄金色の香ばしいバインミーを素早く巧みに窯から取り出していく。1回焼き上がると次を焼き、これを繰り返す。
トーさんのバインミー工房には看板がない。工房はニャチャン市ゴックヒエップ街区の小さな路地裏にあり、入口には薪が高く積み上げられている。これは、ニャチャン市に残る、伝統的な製法を維持している数少ないバインミー工房だ。
トーさんの家族がバインミー作りを始めて60年が経つ。トーさんは幼いころから、火の絶えない窯のそばで父親が1日中汗水を流している様子を見てきた。当時は自宅の周りに同じようなバインミー窯がたくさんあった。
父親が年老いて身体も弱ると、トーさんの兄が家業を継いだ。しかし、兄は重病にかかって亡くなってしまい、以来トーさんが後を継いでいる。「13歳でバインミーの作り方を覚えたので、もう37年になりますね。この仕事が好きだし、家業を継いでいきたいので、辞めるつもりはありません」とトーさん。